譲り特急
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と正面衝突しないのか?」
「さすがに今のニッポンでそんな事故はなかなか聞かないね」
会話している間に、列車は国府原駅を出発した。
金古の話では単線だと言う話だったが、素人目には特に普通と変わらないように見える。
「まもなく、鼎川に到着します。お出口は、左側です」
そう自動放送が流れ、列車の速度が下がっていく。
やがて列車が停まった。しかし、ふと外に目をやると、駅名標には坂々井駅と書いてある。あれ? 鼎川駅じゃないのか? 金古に聞いてみよう。
「次の駅って、鼎川駅じゃないのか? 外に坂々井駅って書いてあるけど」
「ああ、ここは停車駅じゃないよ。ドアも閉まったままだし」
ドアが閉まったままって、なんで分かるんだよ? 座席からはドア見えないだろ? そもそも、なんで停まってるんだよ? そう俺が思っていると、それに答えるかのように放送が入る。今度は自動放送ではなく、車掌による肉声放送だ。
「えー、対向列車の行き違いのため停車しております。4分程お待ち下さい」
列車の行き違い? ああ、そういえば金古が単線だって言っていたな。そうか、線路が1本しかないから、向こうの列車が来るまで先に進めないのか。
窓から外の様子を見る。この坂々井駅には、自分たちが乗ってる列車が占領している線路の他に、もう1本の線路があった。
いや、でも待てよ。こっちは天下の特急列車だぜ? 向こうが先に待っていて、後から来た我らが特急列車を先に通すのが筋ってもんだろ? だいたい、向こうの列車を待ってたら、我らが特急列車が遅れるだろ? ああ、その遅れすらも時刻表が予言してるから問題無いのか。それでも待たされるのは納得いかないが。
3分くらい経った時、反対側から来た特急列車が坂々井駅を通過した。
反対側も天下の特急列車だったのか。対等な関係なら、先に来た方が待つのは仕方ないか。いや、ちょっと待てや。俺たちはずっと待っていたのに、あっちはただ通り過ぎるだけなのかよ? 納得がいかないぞ金古!
「なあ金古、俺たちはずっと反対側の奴らを待ってたのに、反対側の奴らは俺たちを無視していって、そんなのアリか?」
金古が少し呆れた顔をした。一見、表情を変えてないように思えるが、長いつきあいの俺には分かる。
金古が口を開いた。
「言っておくけど、僕たちが乗ってる列車も、反対方向に向かう特急が停まっている駅を通過したことあるからね。気づいてないと思うけど」
マジで?
「いつ?」
「国府原を出た直後で」
金古がさらに言葉を続ける。
「単線なんだから、譲り合うしかないでしょ」
譲る。俺の中には無い言葉だな。理屈は理解できるが、なん
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