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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
22話 一夏VS鈴 その2 & 無人機戦
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いるかもしれないけど、この状況でメンタルが沈んでしまうと自分の身を守ることすら覚束なくなってしまう。

「一夏、あんたは下から行きなさい! 私は上から行くわ! 上下で挟み撃ちすればあの破壊力や火力が観客席に向けられることはなくなる!」

「分かった!」

 だからこの場で必要なのは冷静で具体的な指示。混乱しそうになる時ほど冷静に、具体的な指示を出すことで自分の仕事を意識させる。そうすれば思考が止まらず、立て直すことが出来る。

 一夏が地面に急降下していき、一夏と敵ISの位置を確認しながら私も敵ISの頭上を取る。あのISは全身装甲だから視線がどこを向いているか定かじゃないが、視界外をイメージしながらポジションを取る。龍砲を重ねることで一夏から少しでも私に意識させる。

 敵ISを挟んで私と一夏はポジションを押さえ、敵IS越しに一夏を視線が合う。自然と一夏が踏み込むタイミングが分かる。

 瞬時加速。

 文字通り最速で踏み込み敵ISに切り込む。タイミングは間違いなく完璧。即興にしては上出来すぎるアタック。はっきり言って国家代表クラスでも捌ききるのは困難を極める。

 この一撃は絶対に決まると確信。

「殺った―――!」

「うおおおおっ!」

 私と一夏の武器、双点牙月と葵が敵ISの装甲に触れる。一夏はどうかは知らないが、装甲に触れ、双点牙月から伝わるその感触に勝ったという手応えを感じた。

 だからこそ、私は何をされたのか本当に理解出来なかった。いや、正確には理解したくなかった。

「ぬ、ぐっ!?」

「きゃあ!?」

 指先の感覚が一瞬全部失うほどの衝撃。かろうじて武器を落とすような無様さをさらすことはなかったが、それ以上に必殺の攻撃をあっさりと食い止められたことによるショックの方が大きかった。

「……なんて滅茶苦茶なのよコイツ……!」

 思わず言葉にしてしまうほどの衝撃。一夏を不安にさせるような言葉は口にしたくないというのに口にしてしまった。

「……っ」

 一夏は今の守備に少し放心しているようだった。

 私は一夏のその表情を見て、思わず舌打ちを漏らしかけた。放心よりも不安のほうがまだマシ。放心というのは思考停止の状態と言ってもいいからだ。戦場で思考が停止するというのがどれだけ危険なことか一夏は知らない。

 幸いすぐに『戻ってきた』ようですぐに警戒心の宿った瞳に戻る。それを見て安心した。

 だからといって決して楽観できるような状況ではない。むしろ自分たちの状況が悪くなっていると言ってもいい。

 とにかく一夏の消耗が激しい。私との戦いで疲れているというのもあったが、この突然の状況に頭で分かっていても心と身体がまだ追いついていないのは明らかだった。

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