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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十四話 激震する帝国
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きくして一気にかたをつけようというのですな」
リューネブルクが面白そうに言った。
「まあ、それもありますが狙いは別にあります」
「別?」
フェルナーは不思議そうにしている。いい加減に気付け、らしくないぞ。

「貴族達はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯達を中心に集まるだろう。主導権を握るのはランズベルク伯達じゃない」
「!」

「そして政府はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯がフロイライン達の誘拐を陽動として私を暗殺する事を計画したと判断する事になる。反乱の首謀者はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯だ」

「主導権を握る、お二人を反乱の首謀者にする……。なるほどそういうことか!」
フェルナーの声に力が漲った。声だけじゃない、表情も厳しくなっている。ようやく何時ものフェルナーになったようだ。

「ようやく分かったか、アントン」
「ああ、分かったよ。さすがだな、エーリッヒ」
「大した事じゃないさ、このくらいはね。どの道ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は反逆者になる、喜んで協力してくれるだろう」
「酷い男だな、卿は」

フェルナーが非難するような声を上げた。我慢しようと思ったが無理だった。俺は笑い声を上げていた。周囲が呆れたように俺を見ているのが分かったが止まらなかった。

「フェルナー准将、一体どういう事です?」
「ガームリヒ中佐、反乱は避けられない。だがお二人が主導権を握れば、フロイライン達をランズベルク伯達から取り戻す事も可能だろう、そうは思わないか」
「!」

「なるほど、しかし私達は一度はフロイライン達を人質として政府に差し出したのです、それをどう説明します? 貴族達も簡単には信用しますまい」
ガームリヒ中佐は半信半疑なのだろう。

「人質? 卿らが差し出したのは皇帝陛下の御息女と孫だ。たとえブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が反逆を起したからといって処断できると思うかい? 大体、宇宙艦隊司令長官を呼びつけて夫を助けろと命じる人質がいるものか、処断できない人質は人質とは言えない、お客人だ」

「……」
「彼らを差し出すことによって政府の油断を待っていた。そんなところにランズベルク伯達が誘拐事件を起した。それに付け込んで私を暗殺した、そう言えば何の問題も無い」
「なるほど、辻褄は合いますな」
リューネブルクが頷いた。

「それでどうする? 主導権を握るのは良い、フロイライン達を取り戻すのも良い、だが卿の狙いは何だ? それだけじゃないだろう」
フェルナーが眼を細めて俺を見た。

「フロイライン達を護るんだ。卿らが勝っているなら問題ない。だが負けるようなら、何とか二人をこちらに落としてくれ。間違っても貴族達に渡してはいけない。一つ間違うと自由惑星同盟に亡命政権を作
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