十九話:特別な人
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。君が笑っている。それだけで幸せになれた。でも、遠くから見つめているだけじゃ満足できなかった』
今まで胸の内にためていた感情を吐露していきながらぐだ男は苦笑いする。
自分の情けなさを語っていくのだからそれはある意味で当然だろう。
『もっと笑って欲しかった。君の隣で一緒に笑い合いたかった。でも、君は誰かのために笑って自分を犠牲にする。そんな綺麗なところも好きなんだけど、俺が好きな笑顔はそれじゃないんだ』
「はい……」
『誰かのためじゃない。君が君のために笑う姿が見たくなった。結局は俺のエゴかな。そのために好きになったし、君に告白した。俺が見たい笑顔を見るために』
少しだけ自己嫌悪に陥ったように瞳に影を落としながらぐだ男は語り続ける。
自分以外の誰かでもいいといった気持ちは嘘ではない。
しかし、そうであっても彼女が彼女のために笑えるならば、という条件付きでだ。
彼の愛は一言で言い表せるものではない。
『君は例え地獄に落ちても誰かを救えたのならば自分は救われたって言うと思う。でも、俺はそんなの納得できない! 誰かのために犠牲になる必要なんてない。君は君だけの幸せを見つけるべきだ。君が望まないのなら俺がそれを望む!』
怒りのようで悲しみのような言葉が彼の喉を通って噴き出していく。
『君が他の誰かの為に全てを投げ打って彼らの幸福を祈るように俺も俺の全てで君の幸せを望む!』
自分勝手な愛を罪というのならば彼のそれは罪だろう。
しかし、罪だからこそその愛は美しく輝くのだ。
『だから、もう一度言うよ。君の傍に居させて欲しい。君を幸せにさせてください!』
真っすぐに彼女の瞳を見つめ返事を待つ。
ジャンヌの方も黙ったまま彼を見つめ続ける。
お互いに世界の時が止まったかのような錯覚を覚える。
そして、再び時が動き始めると共に彼女の口が開かれる。
「あれから色々と考えました。ぐだ男君のために断ろうなんて馬鹿なことも考えました」
『うん……』
「でも……やっぱり自分の心に従うことに決めました」
すぅー、と息を吸い込み彼女は真っすぐな想いをぶつける。
嘘偽りのない、心からの願いを。
「私もぐだ男君の傍に居たいです。あなたを―――もっと、もっと好きになりたいです」
精一杯の想いで紡がれた言葉にぐだ男君は一瞬固まっていたがすぐに歓喜の表情浮かべる。
そして、感情のままにジャンヌを全力で抱きしめた。
「ひゃっ! い、いきなりは心臓に悪いです……」
『ジャンヌが可愛すぎるのが悪い』
「なんですか、それは……」
文句を言いながらもジャンヌもそっと彼の体に手を回し抱きしめ合う。
『でも、なんで受け入れてくれたの?』
「
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