十九話:特別な人
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然タラシですから、不安です」
『う…っ』
「でも……許してあげます。ただし条件がありますけど」
痛いところを突かれ困り顔をするぐだ男の姿にジャンヌはクスリと笑い回るように振り返る。
そして、悪戯っぽく最高の口説き文句を口に出すのだった。
「いつもとは言いません。でも、今日だけは……私だけを見ていてくれませんか…?」
少女のちょっとした独占欲。
常に独占をするのは相手を縛るだけの我儘な感情だろう。
だが、一日だけ、少しの間だけならばほんの少しの我儘として許されるはずだ。
『……お安い御用だよ』
「少し説得力がありませんけど、信じてあげます……ふふふ」
花の咲いたような笑顔を向けジャンヌは笑う。
ぐだ男の方もそんな彼女を愛おしく思いながら自然と笑みを浮かべる。
二人はそのままベンチに座り買っていた食べ物を開ける。
『祭りの食べ物ってぼったくり価格だけど美味しく感じるよね』
「お祭りの空気のおかげですね。と、ところでどうしてずっとこっちを見ているんですか?」
『ジャンヌだけを見ていろって言われたからね』
「むむむ……確かに、一本取られましたかね」
お互いに見つめ合いながら笑い合う。
穏やかな時間が流れていく。
何の変哲もない普通の時間。だが、普通故に美しい世界。
『あーん』
「へ? あ、あーん…」
『どう、美味しい?』
「お、美味しいです……」
たこ焼きをお互いに食べさせ合い満足げな空気を醸し出す二人。
ジャンヌは恥ずかしそうに顔を赤らめて咀嚼し少し涙目でぐだ男を見つめる。
ぐだ男の方はしてやったりといった笑顔で笑うばかりである。
『そう言えば花火が上がるらしいけど、それまでにまた出店の方に行かない?』
「はい、そうしたいんですがその前に……ハッキリとさせておきたいことがあります」
真剣な表情で見つめてくるジャンヌに対してぐだ男も真剣な表情で受け止める。
「ぐだ男君は……どうして私のことを好きになってくれたんですか?」
ジャンヌの言葉にぐだ男は困ったように頬を掻く。
彼にとって理由はあまり関係がないのだ。
好きだから、愛している。非常にシンプルな考えだ。
しかし、答えないわけにもいかないのでぽつりぽつりと語りだす。
『最初は一目惚れだった。そこから、優しい性格とか頑固なところとか、頑張り屋なところとか、色んなところが好きになっていったんだ』
「こ、こうして言われると恥ずかしいものですね」
『俺だって恥ずかしい』
お互いに顔を赤くしながら話していく。
それでも二人は目を逸らすことなく見つめ合い続ける。
『でも……一番の理由は笑顔かな』
「笑顔…ですか?」
『そう
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