第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#23
DARK BLUE MOONXX〜Endless Expiration〜
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強力な炎弾をあれほど莫大な量で、一度に生み出すのは絶対に不可能。
それこそ正に、顕現した王の威力
蹂躙の畏怖。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!』
大気を穿ち己の血も噴き搾るような叫喚と共に、
魔狼の周囲を覆い尽くしていた莫大な量の炎弾がスベテ、
狂った衛星のような軌道で封絶全域に降り注いだ。
標的を認識せず無差別にバラ撒かれたソノ蒼き災厄は、
着弾した先から爆発を起こし残骸を宙に捲き上げ、
ソレすらも後から襲い来る炎弾に砕かれ蹂躙の限りを尽くす。
石作りの大地は抉られ、並び立つ高層ビル群は全壊し、
木々は灰燼となり、人という人は跡形もなく砕かれた。
区画を縦断する高架橋が崩れ落ち、緑の園地は焦土と化し、
遠間に位置する波打ち際すら原初の地球のように干上がった。
凡そ、視界に留まるスベテの存在の中に、
原形を留めているモノは何もなくなった。
人類未曾有の戦禍に見舞われたが如く、その至る所で蒼い噴煙が立ち昇り
巨大な火災旋風が無数に捲き起こる、廃都と化した香港の街並み。
動くモノは何もなく、声を発するモノもまたいない。
その頽廃が支配する空間の中心で、蒼き魔狼の狂吼だけが響き続けた。
裡に宿した永劫の嘆きが、天地万物を張り裂くかのように。
「……うっ……ぐ……ぅ……」
頭上から天雷のように轟く狂吼を白い素肌に浴びながら、
少女は堆く積み上がった瓦礫の隙間からその小さな躰を這い擦り出した。
衝撃と焦熱で纏った黒衣はボロボロになり、
内側のセーラー服は引き破れ、額からも血が滴っている。
先刻、窮地に於ける咄嗟の機転により
回避は不可能だと判断したシャナは
破局の狂弾幕が一斉総射される刹那、
近隣の最も頑強な造りのビル内にドアをブチ破って突入した。
そして纏った黒衣を繭のように形成して己の躰を隈無く包み込み、
魔狼の極絶焔儀を何とかやり過ごした。
相手に、一切の回避圏を与えない全 方 位攻撃。
恐らく、新たに生まれた能力を過信して飛んでいたら命は無かっただろう。
『ソコまで見越して、アイツは自分が指示するまで飛ぶなと言ったのだろうか?』
満身創痍の躰に、限りなく透明に近い澄んだ力が沁み渡っていった。
直撃こそ免れたが炎上するビルの崩落に巻き込まれ、
瓦礫を伝って浸透してきた焦熱のダメージは決して小さくない。
正直、視界も足下の感覚も、左半身が失調したかのように頼りなく覚束ない。
それでも少女は破滅の大地を蹴って、目的の場所へと向かった。
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