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エターナルユースの妖精王
妖精の尻尾 《後》
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破ってでも来そうで怖い……」

外れたフードを被り直しながら、やや暗い顔でニアは頷く。幽霊だろうが魔物だろうが、例え竜が束になって飛んで来たって平然としていそうなくらい怖いもの知らずな彼がここまで言うのは初めての事で、そこそこ長い付き合いのルーシィですら珍しいものを見るように目を見開いた。と同時に、あのニアにここまで言わせるベディとやらを想像して怖くなったのだがそれはさておき。

「それで、ナツはどうした?壁を突き破ってから姿が見えないが」
「え?……、……あら?」

いつの間にか本もどこかに消え、周囲に目をやるニアと同じように辺りを見回す。
だが視界にあるのは壁が蹴破られた船と、ナツが吐いた炎で倒れた数人。

「え…ちょっと」

そして。



「やりすぎよォオォッ!!!!」

崩壊した港と、木を振り回すナツ。
港にあった屋台は軒並み壊れ、木はべっきりと折れ、男達は倒れるか吹っ飛ぶ最中で大方やられている。だというのにナツの暴走は止まらない。
先ほどまでランスロットが周囲に気を配った上で戦っていたのだと嫌でも理解してしまうような現状だった。

「おい…これってマズくないか……?」
「み…港がめちゃくちゃ――――!!!」
「あい」
「『あい』じゃないっ!!!」

主犯格たるボラは既に傷だらけで泣いているがお構いなし。暴れるだけ暴れてやると言わんばかりに男達の残党を吹っ飛ばす。もう誰が被害者で誰が加害者なのかが一目だけ見ては解らない。
この状況に僅かながら力を貸してしまったランスロットを呼び出していた(だけでなく、知られていないがかなりの人数を切り伏せていた)ニアが「マズい…」と、苦虫を噛み潰したような顔で呟いた、時。

「こ…この騒ぎは何事かね――――っ!!!」

ガシャガシャと、鎧の部品同士がぶつかる音を響く。揃いの制服に槍と盾を装備した集団を、やや小太りの男が率いて近づいて来ている。
数の多い足音に目を向けて、真っ先に気づいたのはルーシィだった。

「軍隊!!!」
「やっぱり来たか…!!タイミングの悪い奴等だな!!!」

やけくそ気味にニアが叫ぶ。
これで女の子達が助かると安堵する一方で、ニアの言う通り来るタイミングが悪かった。この惨状を見れば間違いなくナツは連行されるし、下手をすればニアだって怪しい。
それに気づいているのだろう。小さく舌打ちをして、飛んで逃げる為の準備として軽く膝を曲げた、と。

「!!!」
「おい!?…うおっ!!?」

まず、ルーシィの腕が掴まれた。それに気づいたニアが声を上げ、と思ったら続けざまに彼の腕も掴まれる。そのまま強く引っ張られ、その勢いでふわりと足が地面を離れて。

「やべ!!!逃げんぞ」
「何であたし達まで――――!!!?」

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