妖精の尻尾 《後》
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あの、気づいた時にはその手に握られていた鎌に、誰かを傷つけ始末する事への躊躇いは感じられなかった、と。
その姿はまるで、死神のようだった、と。
遡る事数時間。
「ぷはぁー!食った食った!!」
「あい」
あの後、ルーシィが置いて行ってくれたお金でたらふく食べたナツ達は、ハルジオンの高台にいた。膨れた腹をぽんぽんと叩くナツの横、石で出来た高い手すりの上をてくてくと歩くハッピーは、ふとその目を右側へと向ける。
密集する建物の向こう側、一望出来る海。この時間では漁に出る船も見えず、ただ一つだけ、遠目から見ても明らかに漁船ではない船がどこかへと向かっていた。
「そいや火竜が船上パーティーやるって。あの船かなあ」
「うぷ…気持ちワリ…」
「想像しただけで酔うの止めようよ…」
どうやらナツの乗り物酔いは乗っていなくても発動するらしい。船、という単語を聞いた瞬間に口元を抑えた彼に、ハッピーは僅かな呆れを混ぜた声でツッコむ。
「見て見て〜!!あの船よ、火竜様の船〜!!あ〜ん、私もパーティー行きたかったあ」
「火竜?」
「知らないの?今この街に来てる凄い魔導士なのよ」
と、そんな彼等のすぐ近くで、二人の女性が海を見つめていた。ショートカットの女性がはしゃぐ声を上げ、疑問の声を上げた連れにそのままの声で続ける。
「あの有名な妖精の尻尾の魔導士なんだって」
その瞬間。
何気なくそちらに目を向けていたナツが目を見開いて。
ハッピーが、三角の耳をピンと立てた。
「妖精の尻尾?」
確認するように呟いて、視線を海へ。ゆっくりとこの街を離れて行く船を見つめ―――また「うぷ」と吐き気を催しながら、その場にしゃがみ込む。
両手は手すりに、しゃがんだまま手すりを支える柱と柱の間から海を見つめ、再度呟いた。
「……妖精の尻尾…」
同時刻のハルジオン。
「これでようやく気ままな一人旅に戻れるな……」
昼まで連れだった少女と別れたニアは、空いたペットボトルをゴミ箱に放り捨てて歩き出す。特に決めた目的はない。もう夜だし今日はハルジオンの宿を適当に取るか、くらいの事しか決めていない。
「アイツはギルドに入れるし、オレは望んだ通りに一人旅だし、万々歳だ」
敢えて人目のない路地を歩いているから、すれ違う人はいない。暗く細い道を、言い聞かせるような独り言を繰り返して歩く。
「もうこれでアイツの事を気にする必要もないし、相手があのいけ好かない奴でも
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