第六話 勝利の栄冠その五
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、デッドボールを受けた彼もこれまで必死に投げてきた彼も。
そして胴上げの後でだ、西本のインタヴューだった。
「長い間辛抱してきてこの瞬間を待って下さったファンの皆さん本当に有り難う」
こう言うのだった、
「阪急を倒すのは長く辛い道程でしたがやっと実現させることが出来ました」
「やったで!」
「遂にな!」
ファン達の声もする。
「これも選手、コーチ、球団一緒になって努力して掴んだたまものです」
西本の顔も満面の笑みだった、近鉄の監督になって六年目に優勝を実現したのだ。これまで幾度も苦渋を舐めてきたが。
選手達の拍手の中佐伯と共に日本酒の樽、勝利の美酒のそれを割った。酒は飲まない西本だったがそれでもそうした。
近鉄はようやく優勝出来た、その近鉄を観て加藤も言った。
「よおやったな」
「ああ、ほんまにな」
福本も言う。
「あいつ等やっとやったわ」
「西本さんを胴上げしたわ」
「これで西本さんも報われた」
「近鉄に来てな」
「近鉄もな」
「報われたわ」
誰もがというのだ、そして。
ロッカーに向かう阪急ナインにだ、マルカーノが言っていた。
「レンシュー、レンシュー!来年に向けて!」
「ああ、そうせなあかんな」
山田がそのマルカーノに応える。
「そして来年はな」
「うちが優勝だよ!」
敗れた彼等だったが近鉄の優勝は笑顔で観て胸を張って去った。その球場では。
「西本さん有り難う!」
「優勝を有り難う!」
まだファン達が叫んでいた、お荷物球団と言われ続けていた近鉄を優勝させた彼に。その声は球場に何時までも響いていた。
第六話 完
立ち上がる猛牛 完
2016・9・2
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