第0話 英雄の気質-この手に剣を強く握り締めて-
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――この手に"剣"を握り締めたのは、一体、何時の頃からだったか……すっかりと忘れてしまった。そう、気が付いたら自宅で“筆”を握る時間よりも、圧倒的に外に出て疲れ果てるまで“剣”を振り回して過ごしている時間の方が多かった。
当時は酷いもので剣の型など知らぬ、素人丸出しの体を痛めそうな無茶苦茶な“英雄演武”。まぁ、簡単に言えば在り得ない我流の剣と言った所か…………両親からは馬鹿にされるは……近所に住む人々には馬鹿にされるは……僕は酷く寂しい少年時代を過ごしたとある面では思う。
不思議な事に、毎日、毎日、両親に馬鹿にされ咎められても、近所に住む人々に馬鹿にされても平気だった。確かに、悔しい、見返してやりたい、反論したい、将来はこんな風になる為に、今、一生懸命努力しているんだ、邪魔しないでくれと最初は思っていた。でも、毎日、毎日、将来の何に足しになっているか分からない様な周囲には馬鹿に見える事を継続する事で、ある変化が僕の体に起こったんだ。
僕の体の変化に気付いたのは家の近所にある大きな川に、近所に住んでいた幼馴染達と一緒に泳ぎに言った時だ。服を脱いで全裸になって泳ごうとすると、幼馴染達が傍に寄って来て体をベタベタと触るのだ。何事かと思えば幼馴染達の身体つきを見れば一目瞭然だった。幼馴染の皆の体は僕の体に比べると“ガリガリのひょろひょろ”だと、当時の僕はそう思った。僕は、毎日、毎日、伊達に剣を振り回していた訳ではなかった。剣の技術は兎も角、しっかりと僕の肉体は鍛え上げられていたのだ。
それも見栄っ張りの僕は父の“一般的に使用される剣”を、毎日、毎日、くたくたになるまで振り回していたのだ、当たり前である。
今、思えばよく体を壊さなかったと僕の肉体の頑丈さに驚くばかりだ。
時が流れるに連れ、周囲の大人達が俺を見る目が変わった。
「あの子は未だに剣を振り回しているのか、そろそろ、現実を見たらどうだ。お前の子供にしてはできが悪いぞ」と事ある事に父に偉そうに語る近所に住む小父さん。
「私の知っている、昔のあの子はもっと賢そうな子に見えたけどね〜」と家にいる母親に聞こえる様に井戸端会議する小母さん達……。
俺の”現実”とは、一体、どういう事なんだ、小父さん? 貴女達の知っている昔の俺とは、一体、何なんだ小母さん達?
俺は初めて、自分の置かれている状況に苦しくなって“剣”を握り締める事を止めそうになった。いや、もう”剣”を握る事が嫌になったんだ。
自宅の自分の机の上にある“筆”を手に取って……俺は真面目に彼等の言う“現実”とやらに向き合った。
気が狂いそうな毎日だった。今まで自分のやってきた何もかも……そう、全てを否定し、彼等の言う事に耳を傾ける事だけに集中し、彼等の言う”現実”に真正面から取り組む俺……。そんな机に向かってい
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