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真田十勇士
巻ノ五十七 前田利家その三

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「この度は」
「例えあの城を攻め落とさずとも他の城を攻め落とせば」 
 それでとだ、奥村が言った。
「同じことですな」
「そうじゃな」
「はい、忍城だけになればどうしようもありませぬ」
「そして肝心は小田原城」
「あの城をどうにかすれば我等の勝ちです」
「既に小田原はな」
 利家は北条家の本城であるこの城のことも話した。
「関白殿が攻められる」
「ならばですな」
「関白殿が攻められれば」
 利家は確かな声で言った。
「あの城もな」
「攻め落とせますな」
「関白殿は人を攻められる」
 城ではなく、というのだ。
「だからな」
「はい、如何に小田原城といえど」
「陥ちる」
「逆に関白様でなければですが」
「あの城は陥ちぬがな」
「それでもですな」
「あの城は陥ちる」
 秀吉が行くからだというのだ。
「その時までにどれだけ他の城を攻め落とせるかじゃ」
「では忍城は」
 兼続は景勝を代弁して利家に問うた。
「我等はですか」
「うむ、特に声がない限りはな」
「攻めませぬか」
「そうしようぞ、我等はな」
「わかりました、それでは」
「関東に入るとしよう」
 こう話してだ、この日は軍議を終えた。そして。
 幸村は十勇士達のところに戻るとだ、彼等に言った。
「ではな」
「はい、これでですな」
「今日は」
「休もうぞ」
 こう言うのだった。
「ゆうるりとな、そしてな」
「明日からですな」
「また進軍ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だから今日はゆっくりと休むぞ」
「わかり申した」
 十勇士達も応え休息に入った、その次の日から。
北陸勢は関東に向かいそのうえで昌幸が率いる真田本軍との合流の場所にも向かっていた。
 その時にだ、信之と幸村に声がかかった。
「前田殿のところにか」
「我等に」
「はい、是非にとです」
 二人のところに来た前田家の旗本が答える。
「殿が申されています」
「前田殿のところに来て」
「共に昼飯を食したいと」
「そう言われています」
 利家、彼がというのだ。
「来て頂けますか」
「前田殿がそう言われるのなら」
 信之が兄として二人を代表して答えた。
「それならば」
「そう言って頂けますか」
「はい、我等これより」
「さすれば」
「では殿」
 十勇士達が幸村に応えた。
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