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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十二話 誘拐
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総監、憲兵隊に連絡は取りましたか?」
「既に連絡はとっております、ヴァレンシュタイン元帥。誘拐犯達は南苑にあるジギスムント一世陛下の銅像の下から地下道を使って宮中へ出入りしたようです」

「ジギスムント一世陛下の銅像の下だと?」
驚いたように声を出したのはシュタインホフ元帥だった。エーレンベルク元帥、リヒテンラーデ侯の顔も驚きに満ちている。

「新無憂宮の地下は巨大な迷路になっています。おそらく見つけるのは不可能に近い、そう思い憲兵隊に出動を要請いたしました。憲兵隊には宇宙港の封鎖、市内の幹線道路の検問を依頼しております」

「待てラムスドルフ、合点がゆかぬ。南苑から此処まではかなりの距離がある。賊達は近衛の警備には引っ掛からなかったのか?」
「……」
ラムスドルフは答えない、いや答えられない。重苦しい沈黙が部屋に満ちた。

「ラムスドルフ、何故陛下の問いに答えぬのです!」
「止めよ、クリスティーネ」
「ですが」
「止めるのじゃ!」

フリードリヒ四世の一喝に侯爵夫人が押し黙った。皇帝は全てを悟ったのだろう、哀れむような眼でラムスドルフを見ている。
「ラムスドルフ、死ぬ事は許さぬぞ。そちは近衛兵総監として近衛の軍紀を引き締めよ」

驚いたように顔を上げたラムスドルフに皇帝が押しかぶせるように言葉を続けた。
「これはそちの役目ぞ、そちこそが近衛兵総監なのじゃ。忘れるでない」
「……」

「行け、行ってそちの為すべき事を為せ」
「はっ」
ラムスドルフ近衛兵総監は深く一礼すると立ち上がり踵を返して出て行った。

やるせないような沈黙が満ちた。皇帝がラムスドルフを救ったという事は分かる。良い事だとも思う。だがラムスドルフにとってはこれからの人生は辛いものになるだろう。皇孫、皇位継承権所持者、内乱の引き金になりかねない少女を誘拐されたのだ。

犯人はおそらくランズベルク伯アルフレットとそれに同調する仲間だ。原作ではフェザーンが黒幕だったが今回はどうか。可能性としては社会秩序維持局と見て良い。

ラインハルト、オーベルシュタイン経由で得た情報を貴族達に流した。彼らの不安を煽っておいてから協力を申し込んだのだろう。近衛に協力者を作ったのは貴族か、それとも社会秩序維持局か、こいつは半々だな。だがこれからの逃亡については社会秩序維持局、いや内務省が積極的に関わっているだろう。見つけるのは容易ではあるまい。

ランズベルク伯アルフレットか、全く碌でもないことをする、どうしようもないクズだな。自分がどれだけ馬鹿なことをしているかなど気づかないのだろう、自己陶酔型のナルシスト、うんざりする。

十六歳と十四歳の少女の誘拐か。おそらく着替えも出来ず、寝着のまま連れ去られただろう。どれほど恥ずかしかった事か……。今
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