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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十二話 誘拐
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の両元帥も表情が厳しくなっている。同じ事を考えたのだろう。

「何が起きたのです、国務尚書?」
傍により声をかけるとリヒテンラーデ侯は忌々しそうな顔でこちらを見た。つくづく思うのだが、悪人面だ。気の弱い人間なら逃げ出してしまうだろう。

「エリザベート・フォン・ブラウンシュバイク、サビーネ・フォン・リッテンハイム、この二人が誘拐された」
「馬鹿な、そんな事はありえぬ」

リヒテンラーデ侯の言葉にシュタインホフ元帥が反駁した。俺も同感だ、原作でランズベルク伯アルフレットが誘拐に成功したのはラインハルトが西苑、北苑の全てを閉じ東苑、南苑の半分を閉じた事で警備を減らした所為だ。それ無しでは近衛兵の巡回に引っかかったのは間違いない。

それが成功した。そこから考えられる事は……。
「近衛に協力者が居た、という事ですか」
答えを出したのはリューネブルクだった。エーレンベルク、シュタインホフ元帥が厳しい眼で彼と俺を睨む。

リヒテンラーデ侯の顔がさらに渋くなる。どうやら侯は気付いていたようだ、顔が渋くなるのも無理は無い。
「軽々しく口にするな、ラムスドルフの立場も考えよ」

どこか押し殺したような声でエーレンベルク元帥がリューネブルクを咎めた。リューネブルクが示した謝罪らしいものは軽く一礼して終わりだった。相変わらずふてぶてしい男だ、そんなリューネブルクにリヒテンラーデ侯がフンと鼻を鳴らす。この爺様も妙な男だ、今の態度からするとリューネブルクが嫌いじゃないらしい。

それにしても道理で連絡してきた近衛兵が要領を得ないはずだ。自分達の中に裏切り者がいたのだ。どう話して良いか判らなかったのだろう、それでしどろもどろになった。

ラムスドルフを信用しすぎたか……。近衛兵総監ラムスドルフ上級大将はこちらに協力を誓っている。小細工をするような人物ではない、誘拐劇には無関係だろう。だが部下の中に誘拐犯達の協力者が居た。金で転んだか脅迫されたか、或いは元々彼らの仲間だったか……。

厄介な事になった。出来る事なら二人の少女には関係なく暴発というのが良かった。あるいはエルウィン・ヨーゼフを攫うとかでも良い。最もそれではブラウンシュバイク、リッテンハイムの両者を反乱に巻き込む事は出来ないか……。上手くいかんものだ。

「陛下はご無事なのですか、リヒテンラーデ侯?」
俺は気まずくなりかけた雰囲気を変えようと話題を変えた。
「ご無事だ、陛下は今クリスティーネ様、アマーリエ様と御一緒だ」

クリスティーネ様、アマーリエ様、その名前に皆が顔を顰めた。雰囲気は前より悪くなった。先ず間違いなくこの件で責められるだろう。どんな無理難題を言われるか、頭の痛いことだ。

「もう直ぐラムスドルフが来る」
もう直ぐ? リヒテンラーデ侯の言葉に皆が
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