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立ち上がる猛牛
第三話 二つの過ちその二
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「それが変わった」
「そのドラフトで、ですね」
「こっちの戦略で選手を指名出来る様になった」
「ここでどういった選手をどう指名するか」
「そうなりましたね」
「そやからここはや」
 西本は強い声で言った。
「山口獲れたらな」
「はい、獲りましょう」
「後はくじです」
「くじでうちが山口引いたら」
「それでやりましょう」 
 コーチ達も口々に言う、そしてだった。 
 くじを引く時になった、ここで見事にだった。
 近鉄は山口を引いた、これで西本は言った。
「これでええ」
「はい、山口ですね」
「山口はうちにきましたね」
「ほな後は入団交渉ですね」
「それに入りましょう」
 コーチ達も言う、西本もそのつもりで入団交渉の用意に入った、だが。
 ここでフロントの方からだ、西本にこう言って来た。
「山口君大丈夫か?」
「といいますと」
「いや、彼幾つや」
 山口の年齢を聞いてきた。
「今は」
「二十五です」
「その歳や」
 フロントの者は懐疑的な声で言ってきた。
「前から思ってたけどな」
「ルーキーにしてはですか」
「歳やろ、しかも山口君のフォームも見たが」
 ここからも言うのだった。
「あのフォームで長い間やれるか」
「それは」
「尾崎君もそやったろ」
 怪童と言われた尾崎行雄だ、東映で恐ろしい剛速球投手として知られていた。
「活躍出来たんは短かったやろ」
「尾崎は実質五年でした」
 浪商を中退して東映に入りだ。
「結局」
「尾崎君でそれやった」
「山口は尾崎と同じで速球派です」
 二人共桁が違う、その速球の。
「そやと」
「大丈夫か、彼は」
「ほなどうしますか」
 西本はフロントの者に尋ねた。
「ここは」
「折角やがな」
 これがフロントの返事だった。
「獲得出来たけどな」
「見送りますか」
「尾崎君のこともあるし歳のこともあるし」 
 フロントの者はこうも言った。
「あの体格やろ」
「一七〇いうてますけど」
 背の話がここで出たのだ、山口は野球選手にしてはどう見ても小柄だった。フロントの者はそこも指摘したのだ。西本も山口を見ているので言う。
「実際はもっと小さいですわ」
「そやな」
「はい、一六九かそれ位ですわ」
「小さい身体であんなボール投げたらな」
 恐ろしいまでの、尾崎の砂塵舞うとまで言われた剛速球と同じだけかそれ以上かも知れないボールをというのだ。
「長くできそうにもないしな」
「見送りですか」
「入っていきなり限界かも知れん」
「ほなやっぱり」
「そういうことでな」
 こう西本に言ってだ、結果としてだった。
 近鉄は山口の獲得を見送ることになった、そして彼は阪急が入団交渉を行い阪急に入団することになった。
 それを
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