第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#21
DARK BLUE MOONXIII 〜D・A・H・L・I・A〜
[9/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……ッ!)
息を呑むマルコシアスの傍らで、己の半身は震える腕を、
鮮血と焼塵に塗れたその手を、砕けた大天蓋に向けて弱々しく掲げる。
“アノ時と同じように”
もうどれだけ手を伸ばしても決して届かない存在に、
それでも尚懸命に手を伸ばそうとするかのように。
その時の光景が、マルコシアスの裡で鮮明に甦る。
(まだ、戦えンのか……?)
心中の問いにマージョリーは応えるコトはなく、それでも手を伸ばし続ける。
開いた彼女の胸元から、鈍い光沢を放つロザリオが音も無く零れた。
(そうか……戦いてぇのか……)
静かな独白と共に王の裡で宿る、殉教の灯。
撃つ手は、たった一つだけ遺されていた。
紅世からこの現世に渡り来て以来、暴虐無尽に荒れ狂い
他の存在を蹂躙してきた己の 『切り札』
何れは決着を付けたいと想っていた “アイツ” との戦いの為に永い年月を懸け、
ようやく完成させた焔の “最終変幻系自在法”
もし “コレ” を発動させれば、存在の力を遣い果たして自分は消滅するかもしれない。
しかし逡巡の時はごく短く、すぐにソレで構わないという想いが胸を充たす。
コイツがそう望むのなら。
喩えどんな結果が待ち受けていようと怯みはしない。
ずっと、最後まで共に在ると、 『約束』 したから。
(一緒に……いこうぜ……我が永久の蒼珠、マージョリー・ドー……
おまえは最後までおまえらしく在れば……ソレで良い……)
その言葉を最後に、異界の神器 “グリモア” から群青の炎が獣の形容を伴って
マージョリーの裡に潜り込んでいく。
本来フレイムヘイズの力とは独立して存在する 「王の意志」 が、
再び己の力の裡に、定められた 『器』 の中に。
その 『器』 を彩る、マージョリーの心象。
ソレは、この世の何よりも美しく、温かく、優しく、
そして哀しい、追憶の幻想だった。
幸福な、夢をみていた。
多く望む事など、何もない。
ただ、掛け替えのない者と一緒に、
穏やかに暮らしそして終わっていけるのなら。
ソレ以外に、一体何を望むコトがあるだろう?
自分が望むのは、ソレだけだった。
たったソレだけで、良かった……
最初から、大事なものなど何もないと想っていた。
でも違った、本当に大切なものは、すぐ傍に在った。
スベテを奪われ生きていると想っていた。
でもそうじゃなかった、絶望に囚われてスベテを捨てていたのは自分自身だった。
何もかもが色褪せ、赤錆て視えた自分の世界。
そこに “希望” という灯火を与え、照らしてくれた碧眼の少女。
だから彼女を 「救う」 為に、限られた時間の中で周到に準備
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ