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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#21
DARK BLUE MOONXIII 〜D・A・H・L・I・A〜
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ンタを追ってきそうな、
恐ッろしい “執念” を感じたぜ」
 眼下でスローダウンのように落下している創痍の美女を、
楕円状の踊り場で一瞥しながら承太郎は先刻の惨状を想い起こす。
「ふむ、確かに畏るべき自在師、そして懼るべきフレイムヘイズだ……
が、今は当座の危難が去った事を喜ぼうと想う。
何よりアノ躰では、当面私を追うのは不可能であろうしな」
「これから、一体どうなるの? アノ人」
 その真紅の双眸を細めながら、
先刻まで互いに(しのぎ) を削っていた者へ対し
シャナが憂慮したような口調で問う。
「あの者の、紅世の徒に対する凄まじい憎しみ。
“過去” に何が在ったかは窺い知らぬが……
ソレはあの者自身が疵を受け入れ、そして乗り越えていくしかない。
“蹂躙” がそう決したように、()くまで戦い続けるというのもまた一つの方法。
我等に出来るのは、その者が現世と紅世の 『(ことわり)』 を(たが)えた時、それを制止する事のみ。
後は、あの者が自分自身で解答(こたえ)を見つけていくしかない」
「アラストール……」
 厳正とした口調に、シャナは押し黙るしかなくなる。
 中途半端な同情や感傷は、相手にとっても自分にとっても
罪悪でしかない事は、少女も充分過ぎるほど解っていたから。
 そのシャナを後目に欄干へもたれ掛かってマージョリーを見据える無頼の貴公子は、
(……どうなるか? か。まぁ、どーにもならねぇな……)
やり場のない気持ちを抱えながら心中で静かに呟いた。





【3】



 残骸の飛沫がバラバラと周囲に降り注ぐ中
まるでその部分だけ無重力空間で在るように、
マルコシアスはマージョリーの躰を己が全霊を以て支え続けていた。
(クソッタレが……ッ! オレの最愛の酒 盃(コブレット)をここまで
ズタボロにしてくれやがって……! 覚えてやがれ……ッ!
きっと今以上に他の徒ブッ殺しまくって、
テメーら全員原形留めねぇ程に咬み千切ってやる……!)
 得意ではない治癒系自在法を美女に施しながら、
狂猛なる紅世の王は眼上で佇む3つの存在に “復讐” を誓う。
 だが今はソレよりも優先するべきコトに己の全神経を集中し、
彼女の存在を支えながら心中で呟いた。
(大丈夫だ……生きてれば…… 『生きてさえいれば』 ……
おまえはまた……立ち上がれる……きっと……今まで以上に強さを増して……
ずっと……そうやってきただろう……? だから……今はもう眠れ……
これ以上……誰にも……指一本触れさせねぇから……)
 紡がれる言葉と共に美女の全身を労るように包み込む、緩やかな群青の火の粉。
 その影響か、或いは全く別の事象からなのか、マージョリーの躰が微かに動いた。

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