第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#21
DARK BLUE MOONXIII 〜D・A・H・L・I・A〜
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そうじゃない。そうじゃないって。
「本当に……毎日が……楽しかった……嬉しかった……
今までの……嫌なこと……
全部……無く……なっちゃう……位……」
たくさん貰ったのは、自分の方。
本当に幸福だったのは、私の方。
まだ、何もしてあげてない。
まだ貰ったもの、少しも返せてない。
「あり……がとう……マー……姉サマ……大……好き……だよ……」
言わないで。
そんな事、言わないで。
だって、だって……
「コレ……を……」
震える小さな手が胸元で鈍く光るロザリオを外し、そっと自分の首に掛けた。
“誰か” に与えられた 『使命』 をそれでようやく果たしたように、
安堵した表情を彼女は浮かべた。
「神様が……護って……くれる……
もう……ルルゥ……には……必要……ない……から……
だから……ルルゥの……分……まで……生きて……
そし……て……」
『幸せに……なって……ね……』
月光に彩られた、翳りのない笑顔。
嫌だと言いたかった。
一人にしないでと泣き叫びたかった。
嬉しくて、哀しくて、苦しくて、愛おしくて。
そしてただ、温かくて。
温かくて……
「か……ぜ……」
やがて、そっと耳元に届いた、最愛の者の声。
草原を翔る夜風が、自分と彼女の髪を静かに揺ら、した。
「……キレイな……風……だね……気持ち……いいね……
マー……姉……サマ…………」
その言葉を最後に、力無く解かれ地面に落ちた手。
安らかな笑みを浮かべたまま閉じる瞳は、本当にただ眠っているように。
でも、その瞬間、確かに。
自分の心の中で、その更に深淵で。
致命的なナニカが、粉々に砕け散った音がした。
「…………ぁ…………あ…………ああ…………ぁ…………」
自分のものではない、別の誰かのような呻き声。
「あ…………あぁ〜…………ぁ…………ぁ…………あ…………」
継いで、咎人のような嘆きも、どこかで。
そし、て。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――――
―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!』
絶叫と共に双眸が裂け、紅い血涙が迸った。
人のモノとは想えぬ哀咽が、周囲に響き渡った。
太陽さえも凍り付かせるような、闇蒼の月。
その無情な光の許で。
吼え続ける愚かな獣の傍らで。
風が、啼いていた。
永遠の 『さよなら』 を道連れに。
←To Be Continued……
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