第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#21
DARK BLUE MOONXIII 〜D・A・H・L・I・A〜
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らも炎が噴き出し、
中から男とも女ともつかぬ火達磨が人間のモノとは想えぬ叫声を発し
のたうつように這い擦り回っていた。
火の廻りが、速過ぎる。
最初に浮かんだ思考はソレ。
しかしすぐに誤りだと気づいた。
仮に配置した爆弾が何かの間違いで一斉に起爆したとしても、
これほどの大惨事を引き起こすコトはなかった筈。
万が一にもルルゥに危害が加わってはならないと、
常にそのコトを第一義として念入りに仕組んだ計画だったから。
(ルル、ゥ……?)
信じがたい光景を前に、一番優先しなければならない存在を喪心していたコトに気づき、
己の愚かさを呪いながらその場所へ駆けた。
炎に包まれて焼け落ちる階段を駆け上がり、
溶けたガラスと焼けた残骸の散乱する床を素足で踏み拉き、
灼熱が肌と髪を焦がすのも構わず自分の部屋を目指した。
アノ娘は、 『このコトを』 知らない。
今日も、仕事で遅くなると言った自分の言葉を信じて、
いつものように椅子に座って待っている筈。
部屋を綺麗に掃除して、欠けた食器をキラキラ光る位に磨いて、
一緒に眠るベッドのシーツをシワ一つなく整えて。
先に食べてて良いって、眠ってて良いって、何度も何度も言っているのに、
それでも椅子の上で小首を傾げ、まどろみと懸命に戦いながら待っている筈だ。
自分に 『おかえりなさい』 と、満面の笑顔でそう言う為だけに。
「ルルゥッッ!!」
殆ど裂けるほど声音で叫び、手を焼き焦がす真鍮のドアノブを開いた刹那。
その炎傷と裂傷だらけの自分の瞳に映った……モノ……
何もかもが、嘘だと想った。
そうであって欲しかった。
この世に蔓延る、ありとあらゆる残酷な事象。
自分はソレに、どれだけ蹂躙されても構わない。
でも、この娘は。
この娘だけは。
『そうなって欲しくなかった!!』
至る所に炎が類焼した室内。
二人で食事をしたテーブルが、共に眠ったベッドが、戯れ合った化粧台が、
火花を散らしながら燃えていた。
その部屋の中心で、濛々と込める黒煙に身を晒されながら、ルルゥが倒れていた。
その華奢な躰に、爆風で飛んできた木の破片が、無惨に突き刺さって……
「ルルゥッッ!!」
瞳から透明な雫を飛び散らせながら叫び、
脇腹から血の滲む彼女の躰を可能な限りそっと抱き起こした。
自分の声が聞こえたのか、ルルゥはそっとその澄んだアイスグリーンの瞳を開き、
呼び掛けに応じた。
「マー……姉……サマ……? あぅっ……! 痛……い……痛い……よ……」
意識と同時に痛覚も覚醒したのか、彼女は消え去りそうに小さな声でそう漏らした。
「喋らないで! 大丈夫だから!! 絶対絶対大丈夫だからッッ!!」
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