第一章 ハジマリ
第6話 不気味な男
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ヤけ、意識がハッキリしない……
恐怖も、怒りも、何も無くなった天馬は思う。
――俺……死ぬのかな……
意識が完全に途切れる。
その寸前。
「っ……ぇ……っ?」
ボヤけた視界の中で天馬の目の前を何かが横切った。
とカオスのうめき声が聞こえ、先ほどまであった圧迫感が消える。
壁に押さえつけていた力が消えた二人は地面にドサッと倒れ、蹲る。
「ごほっ……ッげほっ……!」
急速に肺へと入ってきた酸素に思わず咳込むと、天馬は、目の前に転がってきた物体に目をやる。
「サッカー……ボール……?」
さっき目の前を横切った物もこれだったらしい。
でも一体どこから……
すると、蹲った天馬の頭上から聞きなれた少年の、心配そうな声が聞こえてきた。
その声に驚いて頭をあげると、天馬の良く知っている"彼"が立っていた。
「! フェイ……!?」
「大丈夫? 二人共」
そうフェイは天馬とアステリに手を差し伸べる。
それを掴んで、立ち上がるとアステリが不思議そうな声で訪ねた。
「どうしてここに……」
「物音がして起きてみたら二人がいないから捜しに来たんだよ! そしたらこんな事になってて……」
「ビックリしたぁ」とフェイは一つ息を吐きだす。
「じゃあさっきのボールもフェイが……」
「おい」
「!」
一時の安心もつかの間、怒気を含んだカオスの声に天馬達はハッとする。
振り返るとそこには、ポンポンッと服についた土を落としながら「痛いじゃないか」と砕けた調子で話すカオスがいた。
カオスはその砕けた口調や表情とは裏腹に、発する言葉にはハッキリとした怒りの感情がこもっていた。
そんな彼を見てフェイがツカツカと前へ出る。
「誰だか知らないけど。ボクの友達を傷つけるなんてどう言うつもりだい」
敵を見る様な鋭い目つきでフェイは言葉を並べる。
カオスはそんなフェイを嘲笑する様に「嫌だなぁ」と砕けた口調で続けた。
「そんな怖い顔しちゃって。僕はただそこの裏切り者を始末しちゃいたいだけなのに、彼が邪魔するからさ……」
「面倒くさいから一緒に始末しようと思って」と笑うカオスにフェイは眉を潜め睨みを強くする。
フェイの顔を見たからか、カオスは顔から笑みを無くし「でも」と低い声で続ける。
「君まで邪魔するつもりだったら容赦しないけど。どう? 茶髪の彼と一緒に見逃してあげるからさ、退いてくれない? そこ」
「断る」
フェイは強い口調でそう言い放つと、天馬と一緒にアステリの目の前に立ち、身構える。
「アステリは渡さない」。口に出さずとも二人の思いは同じだった。
それを感じ取ったのか、カオスは言葉だけでなく、その表情にも
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ