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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第6話 不気味な男
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ヤけ、意識がハッキリしない……
 恐怖も、怒りも、何も無くなった天馬は思う。

――俺……死ぬのかな……

 意識が完全に途切れる。
 その寸前。

「っ……ぇ……っ?」

 ボヤけた視界の中で天馬の目の前を何かが横切った。
 とカオスのうめき声が聞こえ、先ほどまであった圧迫感が消える。
 壁に押さえつけていた力が消えた二人は地面にドサッと倒れ、蹲る。

「ごほっ……ッげほっ……!」

 急速に肺へと入ってきた酸素に思わず咳込むと、天馬は、目の前に転がってきた物体に目をやる。

「サッカー……ボール……?」

 さっき目の前を横切った物もこれだったらしい。
 でも一体どこから……
 すると、蹲った天馬の頭上から聞きなれた少年の、心配そうな声が聞こえてきた。
 その声に驚いて頭をあげると、天馬の良く知っている"彼"が立っていた。

「! フェイ……!?」
「大丈夫? 二人共」

 そうフェイは天馬とアステリに手を差し伸べる。
 それを掴んで、立ち上がるとアステリが不思議そうな声で訪ねた。

「どうしてここに……」
「物音がして起きてみたら二人がいないから捜しに来たんだよ! そしたらこんな事になってて……」

 「ビックリしたぁ」とフェイは一つ息を吐きだす。

「じゃあさっきのボールもフェイが……」
「おい」
「!」

 一時の安心もつかの間、怒気を含んだカオスの声に天馬達はハッとする。
 振り返るとそこには、ポンポンッと服についた土を落としながら「痛いじゃないか」と砕けた調子で話すカオスがいた。 
 カオスはその砕けた口調や表情とは裏腹に、発する言葉にはハッキリとした怒りの感情がこもっていた。
 そんな彼を見てフェイがツカツカと前へ出る。

「誰だか知らないけど。ボクの友達を傷つけるなんてどう言うつもりだい」

 敵を見る様な鋭い目つきでフェイは言葉を並べる。
 カオスはそんなフェイを嘲笑する様に「嫌だなぁ」と砕けた口調で続けた。

「そんな怖い顔しちゃって。僕はただそこの裏切り者を始末しちゃいたいだけなのに、彼が邪魔するからさ……」

 「面倒くさいから一緒に始末しようと思って」と笑うカオスにフェイは眉を潜め睨みを強くする。
 フェイの顔を見たからか、カオスは顔から笑みを無くし「でも」と低い声で続ける。

「君まで邪魔するつもりだったら容赦しないけど。どう? 茶髪の彼と一緒に見逃してあげるからさ、退いてくれない? そこ」
「断る」

 フェイは強い口調でそう言い放つと、天馬と一緒にアステリの目の前に立ち、身構える。
 「アステリは渡さない」。口に出さずとも二人の思いは同じだった。
 それを感じ取ったのか、カオスは言葉だけでなく、その表情にも
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