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つま先立ちの恋に慣れたら
つま先立ちの、
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発する言葉には何とも言えない怒気がこめられていて、男たちもそれを感じたようだった。

 「す、すみませんでした・・・!!」
 「おい、もう行くぞ、やばいって!」
 「あ、ちょっと待って。ここにいたことは絶対言わないで下さいね。・・・じゃないと俺の彼女に手を出そうとしたことも含めて、そちらがどうなるかはご想像にお任せしますけど」

 アイドルスマイルを浮かべたまま、最後は刺々しい言葉を放つ怜治に、男たちは顔が青ざめ引きつり、一目散にどこかへ逃げていった。


 「・・・・・・・ふう」
 「・・・・・・・れ、れいじさん、ごめんなさい」
 「なんであやまるの?奈々は悪くないよ」

 相変わらず満面の笑みだが、目は笑っていない。

 「でも・・・」
 「悪いのは、あっち」
 「れいじさん・・・・」
 「というか、なんでここにいるの?たまたま?」
 「・・・撮影って聞いて、どうしても、顔、見たかったんです」

 申し訳なくて、奈々は怜治の顔が見れなかった。これじゃ彼女失格だ。思わず下唇をかみしめる。

 「俺に会いに来てくれたの?」
 「・・・・・もう、会いたいって、言いたくなかったから」
 「・・・」
 「・・・そんなの幼稚に思われそうで。怜治さんの隣にいるには、もっと自立してなきゃだめだって思って、だから・・・だから・・・・でも、結果的に助けられて。これじゃやっぱり子どもみたいですね・・・」

 はは、と力なく笑う私に、怜治さんは驚きを隠せない様子だった。その後彼はいつくしむようにふんわりと笑った。

 「奈々を子どもっぽいと思ったことなんて、一度もないよ」
 「・・・・っ」
 「いつも人の気持ちになって考えれる奈々は十分成熟した大人の女性だよ。俺はそういう目で見てたんだけど、気づかなかった?」
 「え・・・」
 「それに、俺がしばらく時間が作れなかったのも悪かった。あと、会いたいときは言って?溜めこまれても、逆に俺が嫌なんだ」

 奈々がいやな気持ちになるのが、嫌なんだ。怜治は小さく呟いた。
 
 「不釣り合いとか、ふさわしいとか、余計なこと考えないで、とにかく俺の隣にいてくれたらいいから」
 
 怜治さんの言葉が胸にじんわり温かく染み込んでくる。そのままの私でいいんだ。今まで自信がなくてあれこれ考えて張りつめていた糸がぷつんと切れた途端、こみ上げてくる熱い何かで、怜治さんの顔がぼやける。

 「・・・・生理食塩水ですから」
 「うん、生理食塩水だね」
 「強がってません!」
 「分かってるって、ときどき意地っ張りさんだね、奈々は」

 からかわれる前に言っとこうと先手を打ったが、やっぱり空回りしてしまった。くすくす笑いながら怜治さんの大きな手のひらが、ぽんぽんと私の頭
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