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つま先立ちの恋に慣れたら
つま先立ちの、
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 「奈々、おつかれ!また明日ね〜」
 「おつかれ莉子、また明日ね!」

 奈々は莉子と学校からの帰り道、家が離れているので途中で別れて一人で家路についた。
 今日は部活がないから日が沈む前に帰れる。いつもの通学路がなんだか違って見えた。
 久しぶりに時間が取れるから、奈々は歩いている間、何をしようか考えていた。この前買った雑誌を読んで今年の冬はどんな服を買うかあれこれ考えるのもいいし、新しく始めた編み物の続きもしたい。パソコンで好きな歌手の音楽を聴くのも捨てがたいし、耕ちゃんのお菓子をゆったり食べるのもときめく。・・・・でも、それ以上に。

 (・・・・今日A町で撮影って言ってたけど、どんな感じなのかな)

 浮かんだのは怜治のことだった。最近会っていなくて、奈々は寂しい気持ちが募りに募っていた。普通の女子高生と、芸能界で活動するアイドル。まるでドラマの設定ような話で、高校も違えば住んでいる世界も違う。ただでさえきれいな人が周りにいくらでもいるはずなのに、なんで自分を選んでくれたんだろうというコンプレックスはいつも感じていた。胸にずっと引っかかっているが、こんなこと聞くのは失礼だと思ってとても口に出せそうにない。

 (・・・私、怜治さんのこと、なんにも知らないや)

 なんだか情けなくなってきた。いつも助けられてばっかりで、怜治がどんなことをしているのか、どういう風にがんばっているのか、知る機会が全くと言っていいほどなく、奈々には想像がつかなかった。怜治は多忙で、正直時間を切りつめて奈々に会っている。前は会いたいと軽く彼にこぼしていたが、自分の気持ちを何度も言うのは少し子どもっぽくわがままな気がした。

 (・・・ただでさえ大人っぽいのに、考えが幼いって思われたくないもん。でも、ちょっとだけ遠くから顔見るくらいならいいよね・・?)

 こうして奈々は一人で怜治の様子を見に行くことにした。都合のいいことにA町はピリカの近くだった。話せないのは残念だが、怜治にやっと会える。それだけで奈々の心は弾むように軽くなった。



 私服に着替えた後、さっそくA町へと家を出た。11月の風は冷たく、鼻と頬がひりついて思わず身震いし、首に巻いたマフラーにさらに顔をうずめる。早く会いたい奈々はただ足を速めた。
 A町のどこかにいる怜治をしばらく探していると、見つけた。おしゃれなカフェを貸し切って、テラスで女性と二人で話している。どうやらインタビューらしく、真剣な様子が伝わってくる。周りにはカメラマンやアシスタントがいて、現場はかなり華やかだ。

 (うわあ・・・!!芸能人の顔だ)

 そこには普段奈々と会うときの怜治はなかった。完全にアイドルとしてのプロになっている怜治の姿を見て、奈々は少し感動した。

 (こんな怜治さ
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