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つま先立ちの恋に慣れたら

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 「−−−−−−−−はっ!」
 「・・・・ん?どうしたの、奈々」

 週末のある日。奈々は怜治の家に泊まりに来ていた。二人で寝ていたところ、怜治の部屋着の裾をつかんで彼女は涙目でおびえていた。

 「怜治さん・・・怖かったです・・・!!」
 「悪い夢でも見た?」
 「鬼が!!たくさんでてきて、こうなってこうなって、私全速力で逃げたんですけど、あっという間に追いつかれてもうだめだって思った瞬間に目が覚めました〜〜〜〜」

 詳しい状況を身振り手振りで教えてくれたが、いまいちよくわからない。とにかく鬼に追いかけられたらしく、なんだか疲れているようだった。その後も青ざめた様子で心臓飛び出そうとか、生きた心地しなかったとか、思い出したように玄関を振り返ったりしていて、怜治は鬼だけでここまで騒げる奈々がおもしろくて、ついに吹き出してしまった。

 「あーーーーっ!笑いましたね!?」
 「ご、ごめん。いや、だって・・・ぷっあはははははは!!!夢だし、そこまで気にしなくてもいいのに、大げさでおもしろくて」
 「・・・・」

 彼女はふてくされてそっぽを向いて体育座りをしてしまった。どうやらいじけてしまったようだ。笑いすぎたよね、悪かったって。

 「馬鹿にしてるわけじゃないよ」
 「・・・・・・・」
 「そういうところも可愛いなって」
 「はい、ストレートでました」
 「ひどいなあ、ほめてるのに。照れてる?」
 「照れてないです!」

 座ったままうつむいて丸くなり、しばらく黙りこくってしまった。こっちを向かない奈々に焦れた怜治は、彼女のさらさらの髪の毛を一束すくって、くるくると自分の指でもて遊んで気を引こうとしたが、反応はない。

 「奈々」
 「・・・・」
 「いいかげん、こっち向いてくれない?」

 耳元でささやくと、髪の間から見える耳が真っ赤になるのが分かった。帯びる熱が少し伝わってきて、今すぐ甘噛みしたい衝動を抑える。頑なに結んでいる腕同士をほどいて後ろから体全体で包むように抱きしめると、彼女の鼓動が速まるのが聞こえてくる。

 「・・・・近い、です・・・!!」
 「泊まっといて、今さらでしょ。奈々は天然で可愛いな」
 「〜〜〜〜〜〜っ、そんなの知りません・・・!」
 「怖かったね、笑って悪かったよ」
 「分かってくれたなら、いいです」
 「うん」
 「泊まりに来てよかったです」
 「?」
 「悪夢で怖いって理由で誰かを起こして話すなんて、とてもできません」

 奈々は血のつながった家族と一緒に住んでいないことは怜治も知っていた。そして親戚と住んでいるものの、心から甘えることが出来ずにいることも。自分が家族に近い存在になりつつあると思ってもいいのだろうか。もしそうだとしたら、すご
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