暁 〜小説投稿サイト〜
つま先立ちの恋に慣れたら
水族館
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 テレビの向こう側の人。
 違う世界の人。
 手の届くはずのない人。
 会えない時間が長くても、私のこと見てほしくて。
 もっとかわいいって思ってほしくて、こんなことしちゃうのかな。

 −−−デート当日。奈々は自分の部屋の鏡で、全身を確認した。ちょっと恥ずかしいけど、怜治さんの好みかな?
 直接聞いたことはないが、自分の直感を信じて玄関を出た。
 街中を歩く間、他人の視線が気になった。見られているような、いないような。いいや、気のせいだと割り切って、奈々は怜治と落ちあう場所へと足を速めた。


 「水族館に行ってみない?」

 怜治が奈々を誘ったのはほんの一週間前だった。
 彼女はきょとんとしているので、小学校以来行ってないから久しぶりに行きたくなったことを伝えた。

 「ふふ、いきなりびっくりしました。いいですね、水族館!でも人気多いから心配です・・・」

 相変わらず君は俺のことばかり気にかけるよね。

 「大丈夫。室内は暗いからよく見えないし、みんな魚に夢中だと思うよ。それにバレても人ごみにうまいことまぎれるのは慣れてるんだ」
 「そういうことなら、ぜひ行きましょう!楽しみだなあ〜〜!!」


 当日、怜治は人目につかないところで奈々を待っていた。早く会いたい。ふと顔をあげると奈々の姿が見えた。満面の笑顔で駆けよってくる奈々を見たとたん、顔が引きつりそうになった。−−−−−−うそだろう?
 白地に花柄、鎖骨の見える膝丈のワンピース、揺れるピアスに華奢なブレスレット。髪は下ろして少し巻いていて、よく見ると化粧もしている。長いまつ毛にほんのり色づいたチーク、ツヤのある唇・・・文字通り男受けそのものの奈々の姿を見て、怜治は戸惑いを隠せなかった。

 「・・いじさん、怜治さん!あの・・・私なにか変ですか?」
 「ごめん、雰囲気違うから、少しびっくりしただけだよ。行こうか」
 「はい!」

 彼女の手を取り、館内へ入っていく。そして、嫌な予感は的中した。


 他の男が奈々を見ている。どこへ行ってもそういう輩がいるから、まるでデートに集中できなかった。イルカショーを見ても、エサやり体験をしても、おみやげを買っても。考えるのはほかの男の視線と奈々にいったい何があったのかの2択。俺はこんなに心が狭かったかな?一通り回って帰る流れになり、水族館を出てから人気のない道を2人でこっそり通って帰ることにした。しばらくとりとめのない会話をしながら歩いていると、奈々は怜治の手を引っ張って足を止めた。

 「・・・どうしたの?」
 「今日、なにかありましたか?」
 「どうして?」
 「怜治さん、今日上の空な気がしたから。私の気のせいですか?」
 「・・・気のせいじゃないよ」

 奈々の顔が不安で
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