親愛と定めに抗いて
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「ごめんな、頼りにしてる」
謝りながら言われた言葉は、すっと詠の胸に溶け込むモノで。
浮かべた笑顔が綺麗過ぎたから、彼女は泣きそうになった。
――そんな返し方……卑怯よ
トン、と彼女は彼の胸に顔を埋めた。
「ズルい……あんたホント……ズルいわよ」
「クク、俺は卑怯者なんでね」
「ばーか、ばか、ばか」
悪態を尽きながら弱々しく彼の胸を殴るも、全く効いてないことなど分かっている。
「だからさ、いつもありがとな……えーりん」
そんな彼女に返されるのはいつでも不意の一撃で。詠は悔しいながらも嬉しくて歯噛みするだけ。
他にもきっと、話したいことはたくさんあった。しかしこれでいいと思えてしまった。
彼と自分は、まだこのままでいい。
答えを出さない曖昧な関係が居心地良くて。
まだぬるま湯の距離感に甘えていることにした。
†
来客は彼の予想に反していた。
益州での時間はそのモノ達が来れば終わりを告げることは分かっていたが……さすがの彼も頭を抱えることとなった。
絶対に不可測が起きないように手は打ち尽くしたが、万が一ということもあり得る。
詠と二人で山を下りて陣に向かい……小さな待ち人が二人と、来てほしくなかった一人が居た。
静かに目を細めた彼は三人を見据え……いつものように不敵に笑った。
「よぉ、元気そうで何より……んじゃあ、さっさと劉備に引導を渡して……俺達の乱世を始めますかね」
魔女帽子の少女は優しく微笑み、
白に藍が混ざった髪をした少女は彼に駆け寄って抱きついて、
蒼い髪を風に揺らした麗人は片手を彼が上げた手に合わせた。
「そうだな。始めようか。お前と共同戦線を張るのは初めてだが……よろしく頼むぞ、徐晃」
――覆さなきゃならん運命なら変えてやらぁ。史実の夏侯淵が此処で死んだとしても、秋蘭は死なせねぇよ。
定められた軍が交わるその山で、彼は自分だけが知っている世界に吐き捨てた。
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