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乱世の確率事象改変
親愛と定めに抗いて
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として数えなければいけない。大局を見る為には小さく尊い命一つに拘ってはならない。

 一を捨てて十を拾い。十を捨てて百を拾う。それが朱里達のようなモノが身をおく世界である。

 しかして……彼女が今話していることに藍々は疑問を持った。
 政治屋として、軍師として当然の論理を語っていることは分かるが……だからこそ自分達が得をするというのが分からないのだ。
 大局を見る為に切り捨てた敵側の計略は悪辣なれど有用なはず。自分達の頸を絞めるモノであっても、益州内乱の勝利に比べれば些末事だろうと藍々も思う。

 そんな思い悩む藍々を見つめながら、朱里はトクリと脈打つ胸に手を当てて目を瞑った。

――この策はあの人からの伝言だ。私達が“桃香様と共に戦う劉備軍”として確固たる姿を世に示せって……そう言ってる。

 この策は彼女の内の黒いケモノも出していた答え。自分達が一つ間違えば叩き潰されてしまう大きな一手。乱世の行く末さえ左右してしまう大切な戦。
 恋焦がれ、溺れ、求めた。故に彼女は、読み切った。
 自分達だからこそ出来る事がある。朱里はそう考える。他の軍ならば、他の勢力ならば出来やしないこと。
 過去の偉人には居たかもしれない。しかし今の乱世では……桃香達にしか為しえない。

 否……と、朱里の胸が疼いた。

――ううん……出来る人は私達の他に一人。だからこそ、私達を導くことが出来たんだから。

 黒、黒、黒が心を染め上げた。
 自分達がこれから取る行動はきっと掌の上だと知っている。それでもいいと、彼女は思った。最後の最後で勝利する為に、と。

「……桃香様が居るから、出来ることがある」

――彼が居たなら、きっともっとうまく出来た。

 心の中だけで呟いて、彼女は静かに微笑んだ。
 ぞっとする程に妖艶な表情は、幼い見た目に反して際立ち過ぎていた。藍々が小さく震える。

「哀しみを糧として絶望を希望に。人々は龍の背に導かれて階を上る。
 益州は……これからの益州人が守らないと……ね? 私達も、人々も、南蛮の子達も……皆で手を繋いで守ればいい」

 白い羽扇がひらりと舞った。
 ゆっくりと立ち上がった朱里は彼女の策を読みとった藍々に背を向けて扉に脚を向ける。

「藍々ちゃん、後はお願い。私は……しなくちゃダメな事があるから」

 キィ、と寂しげな音を上げる扉。小さな背から放たれる空気に、藍々は口を挟めず。
 甘い甘い声で、彼女は愛しさを込めて小さく言葉を紡いだ。

「絶対に逃がしませんよ……秋斗さん」





 †





 益州の北東、漢中から少し離れた場所に一つの集団が居た。
 なるたけ“其処”は避けたいと願っていた彼ではあるが、まさか漢中の城で合
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