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立ち上がる猛牛
第二話 エースとの衝突その五
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 しかしだ、これまでその毎日で現役時代を過ごし大毎、阪急でコーチや監督を務めてきただけではない。中学から立教大学、ノンプロの熊谷組で野球をしてきた、大学やノンプロでは選手兼任で監督を務め優勝もさせてきた立場から言うのだ。
「ピッチャーが要でや」
「エースですか」
「確かなエースがおらな勝つことは出来ん」
「そうですな」
「これは変わらん」
 どのチームでもというのだ。
「大毎でも阪急でもそやった」
 特に彼が十一年采配を執った阪急ではそうだった、右のエース米田哲也と左のエース梶本隆夫がいた。そして彼はアンダースローのエース山田久志も育てた。
 だからこそだ、ここでもこう言うのだ。
「近鉄も同じや」
「そしてそれがスズ」
「スズしかいませんか」
「速球派のスズを技巧派に変えて」
「エースになってもらいますか」
「そうしたらうちは確実に勝てるだけやない」
 それだけではなく、というのだ。
「負ける数も減る」
「だからですか」
「スズには何としてもですか」
「技巧派になってもらう」
「是非共」
「わしはこのチームもや」
 近鉄もというのだ。
「絶対に優勝させる、やるで」
 鈴木を技巧派にするというのだ、そして実際にだった。
 西本は日々鈴木に言った、彼のピッチングについて。だが鈴木もプライドが強く衝突ばかりでだった。このシーズンは終わった。
 その五位という順位にだ、西本は言った。
「遠いのう」
「五位ですか」
「去年は最下位でしたから」
「まだましですが」
「ジョーンズはホームラン王を獲得しましたし」
「見るべきものはありましたね」
 コーチ達はその西本に言った。
「何とかです」
「最下位は脱出しましたし」
「それならですね」
「まだましで」
「これからですね」
「優勝にはまだまだや」
 西本はあえてこう言った。
「わしは近鉄を優勝させる為に来たからな」
「では五位ではですね」
「とてもですね」
「満足するものやない」
「あくまで優勝が目標ですか」
「そや、その為には練習してや」
 若手の選手達も昼も夜も練習させている、それはキャッチボールのあり方から教えていた程だ。梨田昌孝や有田修三といったキャッチャーにだ。羽田耕一、栗橋茂、佐々木恭介、石渡茂といった野手陣も鍛えていた。
 井本隆達投手陣も同じだった、だがここでだった。
 西本はブルペンで投げている鈴木を見てだ、またコーチ達に言った。
「あいつが変わってや」
「それで、ですか」
「ようやくですか」
「近鉄は確かになれる」
「ほんまの意味で優勝出来るチームになりますか」
「そや、近鉄はまずあいつや」
 鈴木、彼があってこそというのだ。
「あいつにもう一度勝てるピッチャーにさせる」
「そうですか、
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