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立ち上がる猛牛
第一話 キャンプその一
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だ。西本のやることはオーソドックスである。三原の様に魔術的な采配や選手の起用をすることはない。その采配や起用もだ。あくまでオーソドックスなのだ。見方によっては面白くない野球である。
 しかしその野球をよく知る者にとってはだ。そうした野球こそがなのだ。
 本物の野球として認められ愛されていた。西本の野球はそうした野球だった。戦力を育てていきそのうえで確かな実力をつけて勝っていく、そうした野球を進めていっているのだ。
 その彼がだ。今の近鉄を見てだ。決意を見せたのだ。
 そしてその決意のままだ。彼はだ。
 すぐにだ。ランニング中の若い選手達にだ。こう怒鳴るのだった。
「もっと速く走るんや!歩いてても何にもならんわ!」
 早速だった。そうしたのだった。そしてだ。 
 選手達を叱咤しつつだ。自分自身もだった。
 自ら動きだ。選手達の傍まで来てトスを送りだ。打たせるのだった。このトスバッティングにだ。選手達は目を瞠った。
「監督が自分でか」
「自分でトスしてか」
「練習に付き合ってくれるんかいな」
 このことにだ。彼等は驚いたのである。
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