一話 帰郷の青年
周りを山で囲まれた、高地にある緑豊かな場所――ウチテツ村。その村の入り口であることを示している立派な木の鳥居。その真下に、一つの人影があった。
「……懐かしいな」
声からして、まだ若い青年のようだ。
彼は鳥居から村の中心部へと続く石段を登っていくと、もう一度静かに呟く。
「……本当に、変わっていないな」
昔と比べれば少しは変わっているところもあるのだが、そんなことは青年は気にしない。彼にとって大事なのは、村がまだ存在していることなのだから。
石段の一番上に座っていた門番の中年の男が、青年に気付いたかのように、手を挙げた。
「よう、旅人さんよ!」
「……俺のことか?」
「そうよ。お前さんだ。 あんた、この村に何の用だ? 最近はちょいと物騒でなぁ。門番である俺も忙しいんだよ」
「あー……これを見れば分かるだろう?」
そう言って、青年は名刺サイズの一枚のカードを、懐から取り出した。
「ん? どれどれ…………ほぉ、お前さんはハンターだったのか! それならいいぜ。ハンターズギルドは……分かるか?」
「あぁ。心配は無用だ」
青年は、男に渡していたカードを回収すると、古い記憶便りにまた歩き出す。
彼が男に見せていたのは、ギルドカードと呼ばれる身分証明書のようなものだった。
この世界には、独特の進化を遂げた生物がわんさかいる。時には、それら――【モンスター】が人に外を成すこともあった。
その害のあるモンスターや踏み込むのが難しい土地での命を賭けて討伐・捕獲・採集するのを生業としたものを、市民は敬意をこめて【ハンター】と呼んでいた。
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