第11話 初めまして
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できるだろうか?
僕だったら少し怖い。さらに言うと西木野さんはか弱い女の子だ。
そんな人相手に話したら何をされるかわからないのが今の世の中。
よくよく考えてみれば普通にわかることだった。
「...ごめんなさい。無粋な質問でした」
「え、いやそんなことはないわ。というかいちいち謝らないでよ。別に謝ってもらう為に言ったんじゃないんだから」
「でも....普通自分の秘密なんて赤の他人である僕に話すわけないじゃないですか?そういうところに気が回らなかったなぁって」
「いやだから音楽のことは秘密にしてないわよ」
....え?
「私の将来はパp...お父さんの後を継ぐことって決まってるの。だから私の音楽はもう終わってるのよ。わかってくれた?」
「...そういうのっていいんですか?」
「別にいいわよ。この話は貴方に限らずほかの人にも話してるから」
「いやそうじゃなくてですね...」
いよいよ西木野さんは怪訝な表情で僕を見つめる。
まぁ、僕が必死になって考えて西木野さんのことを思って発言を訂正したのに見当違いだったってことはこの際置いておく。
僕が聞きたいのはそこじゃなかった。
もっと大切なところを蔑ろにしていたような気がした。
「それって、自分のやりたい夢をわざわざ諦めてその...お父さんの後を継ぐってことですよね」
「そうよ」
「それで西木野さんは満足しているんですか?」
「....」
核心。
僕は質問をぶつける。
その質問に沈黙で返答する。
「満足も何も、私は仕方ないって思ってるわ。そういう人生もあるんだって」
「それで納得できるんですか?」
「それこそ貴方には関係のないことよ。貴方には貴方の人生、私には私の人生があるの。そんなのさっき自分で言ってた赤の他人である貴方に話す必要はないわ」
そうだ、西木野さんの言う通りだ。
僕は黙って頷くことしかできなかった。
これ以上踏み込むのは得策じゃないし、僕らしくない。
僕は黙って先を歩く赤髪の少女の後ろ姿を眺める。
───またやってしまった。
僕は、そんな後悔の意を胸に抱きながら昔の僕を思い出す。
人のプライバシーに無断に入り込みすぎて、人を不快にさせてしまう。
気を付けようと。良くないことだと。
自分に言い聞かせながらも人が悲しんでるところや苦しんでいるところを見てしまうと、どうしてもお節介を焼いてしまう。
それがまた引き金となって今度別の人を悲しませてしまい、気づいた時には手遅れになるパターン。
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