Side Story
少女怪盗と仮面の神父 28
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物ではないらしい。
意外な奥深さに感心しかけ、はた と顔を上げる。
「答えを選ぶ瞬間、に?」
「そう」
「じゃあ、みんな、崖落ちを期待させる意図があったり、崖落ちを期待して観てるわけじゃない、の?」
「貴女が言うところの『崖ドボーン』は所詮、数ある選択肢の一つだもの。むしろ、一時期世界中で濫用された結末に、またかと落胆する観客のほうが多いくらいで」
「だからかああ!」
アーレストの言葉尻を打ち消し、頭を抱えるミートリッテ。
誰に訴えても、毎回何故か空回る『崖ドボーン』熱……
ようやく合点がいった。
どれだけ話の内容が面白かろうが奥深かろうが、同じ経過と結論ばかりをくり返し見せられれば、いい加減欠伸も活躍したくなる。
つまり
『飽きられていた』
それだけのことだ。
「人気作には大抵出て来る舞台なのに誰も興味を示さないからおかしいとは思ってたのよ! 役者の聖地って、もしかして観客側の皮肉!?」
「語源は役者の、大作や人気作に出演できるほどの実力者。当時は崖落ちが一流への関門と考えられていたの。今ではまあ、皮肉になっちゃったわね」
「なんてこと……」
それでは『崖ドボーン』熱を分け合う仲間の存在など絶望的じゃないか。
一緒に眺めたり飛び込んだりすることはおろか、崖についての歓談さえも難しい。周囲から苦笑いと生温かい視線を浴びる中、一人でぶつぶつと呟く日々を受け入れるしかないとは。
「流行り廃りが著しい、使い捨ての風潮が憎い……っ」
「どんなに好きでも同じ物《《だけ》》は体が受け付けないもの。仕方ないでしょ」
「ぐぬぅぅぅ〜……飽きに寛容な贅沢者共め! 質素倹約の大切さをもっと世界に広めなさいよ、アリア信徒!」
「それ、ちょっと違う」
「解ってて八つ当たりしてるの!」
「信仰をダシにされても……。本当、困った娘ねぇ」
神父の苦笑いに、浮き気味だった後頭部がかくりと落ち……
「…………────っ!?」
顔上で鋭く光る銀色の物体と、それを持つ人物を目にして、硬直した。
「な……なん、で?」
どうしてここに。
いつから居たのか。
金色の髪を後頭部で団子状に纏めた女性が、細長い剣を右手に構え。
群青色の冴えた眼差しで、地面に転がる二人を静かに見つめていた。
「……ハウィス……」
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