第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#19
DARK BLUE MOON? 〜Gravity Angel Drive〜
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中に甦る一人の人間と同じ世界へようやく旅立てるという切望が
不思議と “彼女” の心を安堵させた。
(コレが……私の 『罪』 に対する 【罰】 だというのならば……
致し方あるまい……)
「……」
心中でそう呟き儚むように瞳を閉じるそのラミーの想いなど微塵も斟酌せず、
マージョリーは殺戮の焔儀を己の右腕に宿らせる。
ものの数秒で 『炎獣』 数体分の炎気がヴォゴヴォゴと肉瘤 のように
彼女の細腕を覆っていき、やがてソレは巨大な群青の “脚” と化す。
「本体」 とはいえ実質トーチに過ぎない己を討滅するには大袈裟過ぎると
半ば諦観にも近い感情でラミーはソノ焔儀を見つめていたが、
最早風の前の塵に同じく黙として語らない。
そして生と死が一点に交錯する終極の中で、
今や絶対的な捕食者となったマージョリーの心奥に甦るモノ。
ソレは、これまでの残虐な記憶ではなく、一つの優しい追憶。
“アノ娘” と出逢って以来共に織り成した、光り輝くような幾つもの場面。
(……)
部屋に戻ると、アノ娘がいるのが嬉しくて。
マー姉サマと呼びながら、自分の娼館着に擦り寄ってくるのが可愛らしくて。
子供っぽい仕草で自分の作った食事を口に運ぶのは愛しくて。
他の娼館仲間達みんなから、アノ娘が好かれるのは少しだけ妬ましい反面、
とても誇らしかった。
自分を死の淵から救ってくれた、優しい娘。
自分に人間の心を取り戻させてくれた、大切な娘。
だから、何でも出来た。
だから、何でもしてあげたかった。
“とても、幸せだった”
アノ娘が笑ってくれるなら、どんな悪逆非道な行いだろうと怯みはしなかった。
そして。
やっと。
やっと……
(ルルゥ……もうすぐ、よ……)
優しい過去の追憶に浸りながら、マージョリーは今はもう傍にいない少女の名前を呟く。
同時に、胸元のロザリオも熱を持つ。
(もうすぐ、終わるわ……ねぇ? ルルゥ……)
その口唇に浮かぶ静謐な微笑とは裏腹に、
右腕に宿る巨大な群青の前脚は唸りをあげて折れ曲がる。
(そうしたら……二人で……静かな場所で……穏やかに暮らしましょう……
ずっと……ずっ……と……ねぇ……?)
ソノ刹那、マージョリーの瞳から流れ落ちる、一筋の涙。
「ルル……ゥ……」
「!?」
彼女の時間の概念が混濁している理由を知らないラミーは、
長年自分を追い続けてきた戦闘狂のその意外なる素顔に息を呑んだ。
美しく、そして優しい記憶は、人の心を捕らえて離さない。
ソレは、人間も紅世の徒も関係ない。
そしてソレを惨たらしく踏み躙ったモノは、誰であろうと絶対に赦さない!
憎しみと絶望が生み出す狂気の微
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