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最後の忍び
〜The Last Resolution〜
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[1] 最後
【一】


“鮮烈のリュウ”
 その武名()が示す通り、その男の放った一撃は、
文字通り魔を斬り裂いた。
 銀色の仮面、黒のラバースーツ、忍者(しのび)とは想えぬ鍛え抜かれた剛腕。
『龍の一族』 その継承者の証で在る 『龍剣』 が、
魔人の生み出せし常闇の 「結界」 を討ち滅ぼした。
 怨神(おんしん)妖蛇(ようじゃ)』 の出現により、
時空が入り混ざり混沌と化した魔境 “姉川”
 その次元の狭間(はざま)にて、より混沌を深めるため
魔人、(たいらの) 清盛(きよもり)が執り行っていた邪法の禁儀、
しかし奇しくもその “混沌の歪み” が時空を超えて呼び寄せてしまった
龍の忍者により、魔人の目論見は未然に阻止された。
「おのれ……!」
 老齢とは想えぬ、龍の忍者(しのび)を凌駕する体躯、
その体躯(からだ)を覆う、巨大なる数珠。
「おのれ……! おのれ! うおぉぉぉのれえええええぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」
 魔人の憤怒(ふんぬ)、その咆哮は周囲の古風な建物を侵蝕するようにして帯びる、
近代の高層ビル、内部の鉄筋までを震わせて轟いた。
 重さ数千斤は在る巨大な数珠を、魔人はその重量など意に介さず朽木を振るうが如く
やたらめったらに龍の忍者へと()り出す。
 怒りで我を喪失(うしな)っている故に、最早 「技」 とも呼べぬ代物であるが
不可思議なコトに魔人の刳り出す豪撃は、揮うごとに凄まじい 『旋風』 を巻き起こし
周囲の配下である魔獣を跡形も無く激砕しながら龍の忍者(しのび)へと迫る。
 そして更に奇妙なコトであるが、周囲の味方を(ほふ)るごとに数珠には光が宿り、
その 『進撃』 に比例して威力が増大していった。
「むうッ!」
 数多の闇の眷属、邪鬼眼の王すらも討滅した慧眼、
超忍、“リュウ・ハヤブサ” はその洞察で魔人の武具に宿りし
『属性』 を即座に看破、刃を交えるコトなく尖鋭な体捌きのみで
巻き起こる旋風の暴圏(ぼうけん)迄をも見切ってソレを(かわ)
最終的には高速のバク転の後大きく跳躍する。     
 天空の闇に紛れし影、然る後。
「とぅりゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
 無音暗殺を旨とする忍者(しのび)とは想えぬ喚声、
裡に籠った気魄は正に龍の息吹。
 闇の中から、夥しい数の光閃(ヒカリ)が恐ろしい速度で飛び出してきた。
 ソレが両の指を遥かに余る手裏剣の叢刃(そうじん)だと気づいたのは
魔人、清盛をして迎え撃った直後、背後の異形の者達はそのヒカリが
何なのかすら理解出来ぬまま体積比数十倍の頭部、四肢、
果ては頑強な武具や甲冑に至るまで、
八方、卍、稲妻、古風な|苦無《クナ
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