第三章
[8]前話
「そうしてるんだよ」
「凄く用心してるのね」
「猟師さんの集まりに言われてね」
「あっ、ここに来る時に私も猟師さんに会ったよ」
「赤頭巾もかい」
「そうなの、狼に注意しなさいってボールも渡されて」
「中に臭い液体が入ってるだね」
お祖母さんも知っているものでした。
「それでだね」
「うん、それをもらったの」
「そうなんだね」
「用心しなさいって」
「そうだね、用心しないとね」
「お母さんにスタンガンを貰ったし」
「お祖母ちゃんも持ってるよ」
赤頭巾ちゃんにこのこともお話しました。
「ちゃんとね」
「そうなのね」
「それで今日は何の用だい?」
「お母さんからお祖母ちゃんに届けものがあって」
「赤頭巾がお使いに来てくれたんだね」
「そうなの」
「そうか、お使いご苦労だね」
ここまで聞いてでした、お祖母さんは赤頭巾ちゃんを褒めました、そのうえででした。
「じゃあご褒美にお菓子とコーヒーはどうだい?」
「あっ、ご馳走してくれるの?」
「お祖母ちゃんも丁度って思っていたからね、二人で食べようね」
「うん、それじゃあね」
赤頭巾ちゃんはお祖母さんの申し出に笑顔で応えてでした、そうしてです。
壁に囲まれたお家の敷地の中に案内してもらいました、扉はすぐに固く閉められてしまいました。帰りは日の高いうちにでした。
赤頭巾ちゃんはお家に帰りました、スタンガンを手にしたまま。
その赤頭巾ちゃん達が通った森の中で、です。夜になってです。
狼達は困ったお顔でこんなことをお話していました。
「最近森を通る人間達が物騒だな」
「そうだよな」
「どうにもな」
「何かと」
「猟犬大勢連れてパトロールしたりな」
「スタンガンや臭い水が出る球持ってたり」
「婆さんの家なんか壁で囲んで」
こうしたことをお話するのでした。
「ガードが固いっていうか」
「物騒だな」
「そうだよな、何かと」
「明らかに俺達への用心だな」
「熊の旦那にもな」
「俺達人は襲わないのにな」
狼のうちの一匹がこのことを言いました。
「熊の旦那もここの森の旦那はな」
「そうだけれどな」
「それを知らないでな」
「あそこまで警戒されるのもな」
「おかしな話だよ」
「全くだな」
こう言いはしました、ですが。
狼達は赤頭巾ちゃんはおろか猟師さんにもお祖母さんにも近寄りませんでした。近寄れないともいいますが。森は平和になりました、赤頭巾ちゃん達にとってみれば彼等の用心のお陰で。
新説赤頭巾 完
2016・4・22
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