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百人一首
6部分:第六首

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第六首

               第六首  中納言家持
 寒く凍えるような冬の夜。その冷たさの分だけ清らかで澄んでいるようだった。
 その清らかさを見上げつつ物思いに耽っていた。考えることは浮世のことであったがそれはふと目に入ったもので変わった。
 それは橋だった。星達の河に橋がかかっていた。それは彼が今この夜空には見えなかったものだ。しかし今それがふと目に入ったのである。かささぎが列をなして作っているその橋が今天の河を渡しているのである。星と鳥のその調和が今家持の目にも入ったのである。
 その橋がかかっている河を見て彼は二人のことを考えだした。いつも年に一度しか遭えないという牽牛と織女。二人は河に阻まれて年に一度しか逢うことはできない。
 だが今は橋がかかっている。その二人を隔てている橋に。それを見て彼は今宵は二人が密かに逢っているのではないかと考えるのである。
「だとすれば」
 微笑を浮かべつつ述べた。微笑みと同時に歌が宿ってきているのがわかる。それを感じてまた微笑む家持であった。
「それはまことによいことだ」
 二人のことを想いつつ呟く。そうして冬だが七夕の二人のことを詠おうと考え。今静かにひとつの歌を口ずさむのであった。

かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける

 かささぎがかけたその橋を見上げつつ。今はこの歌を二人に捧げる家持であった。今宵は密かに逢うことを楽しむ二人の為に。静かに捧げつつ冬の夜空を見上げているのだった。


第六首   完


                 2008・12・4

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