第十二話 緒戦の勝利、そして大変な日々
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そしてトーナメント当日。
「大丈夫かな、ここまでやって出てきてなかったら俺たち全員辺境の流刑地行きだぞ」
装甲擲弾兵本部に着くまでのさほど長くない時間の間、居心地悪さを抱え、地上車の後部座席に収まり悪く座った俺はこの一週間にやり残したことはなかったかとやってきたことをひたすら振り返っていた。
何せ下っ端とはいえ、門閥貴族の嫡男の人生と一族の浮沈がかかっているのである。失敗すれば無事ですむはずがない。
「心配ないよ。僕らだけならともかく、ツィンマーマン家全体やファルストロング一門、地上軍も協力してくれたんだ。万が一にも失敗することはないよ」
ブルーノはそう言ってくれたしもちろん、工作に手抜かりがあったとは思わない。知識ではなく実感として詰めの甘い性格を自覚していたから、全ての工作を通り一遍ではすませず反復して行った。学科の課題や自主訓練に充てる学習時間の半分以上を割くほどに。
ツィンマーマン一族の有力者やファルストロング一門の貴族に手紙を書き、ツィンマーマン家の家臣筋の家出身の生徒やファルストロング一門に属する帝国騎士の家出身の生徒からこれという人物を選んで観戦の幼年学校代表団に推薦し、父親が地上軍の士官だという生徒にもトーナメントの情報──オフレッサー大将が観戦に来るという情報を流して観戦を勧めた。
「アルフは宇宙艦隊に行くと思ってたけどな。装甲擲弾兵志望だったのか」
「地上軍なら運が良ければ要塞勤めになって退役まで安全に過ごせるからな。分かるぜ」
「熱心なのはいいけど。やりすぎると足元をすくわれるよ」
「手柄の一人占めはなしだぜ」
「もちろんだって!」
「優勝はやっぱりキルドルフ大尉かなあ」
「いやキスリング少尉だろう」
出頭人めいた立場になる前に結んでおいた友情が健在で、話をするのも楽しかったり、他愛もない話から思わぬ人生の選択肢を発見したりブルーノやホルストに心配されたり冗談半分に疑われて焦ったり──誰の部下になるにしろ、裏切りなんぞする気はない。特に戦場での裏切りは──、トーナメントで誰が優勝するかに小銭を賭けたり優勝候補の士官の戦技についての議論をしながらであったとはいえ、片手間仕事はしていない。だが所詮は協力者が仕事をちゃんとやってくれなくてもやりすぎても歯車が狂う人まかせの計画である。不安は尽きなかった。
「絶対大丈夫」
「だと、いいがな」
「大丈夫。ホクスポクス・フィジブス、『凶事は消え失せた』、さ」
どうやったらそこまで無邪気になれるのか不思議なくらい成功を信じて疑わないブルーノの笑顔、そして堂々たる呪文の解釈の間違いに俺が言葉を失ったとき、地上車は装甲擲弾兵本部の門をくぐった。
そして俺の不安を払拭させるためわざとそうしているのか、背徳的な嗜好の持ち
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