第二章
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「練習してね」
「お家でも」
「そうしてね」
こう言って送りだした、そして。
夏子は今度は慶彦のレッスンをした。長身で繊細な外見の彼に。慶彦はもの静かで大人しい少年だ。そして演奏も。
繊細で美麗だ、どんな曲も見事に弾き。
コンクールにも出ていた、タキシードを着て演奏をする彼を会場で観てだった。
沙織は顔を紅潮させてだ、共に観ている夏子に言った。
「池田さん本当に」
「いい演奏するわね」
「はい、それに」
さらに言う沙織だった。
「奇麗です」
「彼が?」
「あの服タキシードっていうんですよね」
「そう、こうした時に着る服よ」
夏子は横にいる沙織に答えた。
「こうした時にね」
「そうですよね」
「それにね」
「女の子のドレスよ」
それにあたるというのだ。
「女の人はこうした時ドレス着るわね」
「コンクールの時は」
「そして男の人はね」
「あの服ですね」
「そう、タキシードよ」
あの服だというのだ。
「今池田君が着ているね」
「素敵ですね」
うっとりとした声でだ、沙織は言った。
「本当に」
「タキシードが?」
「いえ、池田さんが」
こう言ったのだった、半ば無意識のうちに。
「凄く素敵です」
「彼なら優勝出来るわ」
「優勝ですか」
「それだけの実力があるわ」
まさにというのだ。
「彼ならね、それにね」
「それに?」
「彼は凄く優しくて繊細な気遣いが出来るのよ」
「お人柄もいいんですね」
「そうよ、本当に素敵な方ですね」
沙織は夏子のその話を聞いてだった。
あどけない顔をうっとりとさせてだ、無意識のうちにだった。
自分の左胸に手を置いてだ、こう言ったのだった。
「お奇麗なだけでなく」
「そうよね」
「不思議ですね」
そのうっとりとした顔でだ、こうも言った沙織だった。
「あの人を見ていると苦しいんです」
「そうなのね」
「どうしてかわからないですけれど」
「そのことはね」
静かに微笑んでだ、夏子は。
言葉を少し置いてだ、こうも言ったのだった。
「わかる時が来るわ」
「そうなんですか」
「優木さんもね」
「ううん、本当に」
その彼をまた見てだ、沙織は言った。演奏は既にはじまっている。
その流麗かつ優美な演奏を聴きつつだ、沙織は言った。
「素敵ですね」
「音楽もいいわね」
「はい、かなりですよね」
「ああした音楽も演奏したいわね」
「私にも出来ますか?」
「先生いつも言ってるわね」
にこりとしてだ、夏子は沙織に言った。
「ピアノは弾けば弾く程よくなるのよ」
「だからですね」
「そう、弾いていればね」
「池田さんみたいな演奏も」
「出来る様になるわ」
「わかりました、男の人の演奏なのに
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