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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十話 謀議
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グラム伯は危険だとみなされたというわけか。

「万一の場合です。あまり考えないでください。それよりもフェザーン方面は頭脳戦、心理戦になるでしょう。そちらに集中してください」
「はっ」



帝国暦 487年 11月14日   オーディン 宇宙艦隊司令部  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


シュムーデ達は驚いていたな。やはり事前に言っておいて良かったか。まあ万一の場合だ、必ず俺が死ぬと決まったわけじゃない。後はメルカッツ提督に何時話すかだが、そろそろ話すべきだろう。これから会って話すとするか。

応接室から戻った俺は、早速メルカッツ提督に連絡を取ったが外出中だった。陛下の謁見に立ち会っているらしい。書類の決裁を行なうかと思ったが、何となくその気にならなかったので以前から気になっていたことを調べることにした。

「フィッツシモンズ中佐、少し調べ物がありますので資料室へ行ってきます」
「では私達も同行します」
「?」

私達? 見るとヴァレリーの他に男爵夫人も同行しようとしている。必要ない、と言おうとすると
「シューマッハ准将、キスリング准将から閣下を一人にするなと言われています」
と言われた。

宇宙艦隊司令部の中でそんな危険なんてあるわけ無いだろう、そう思ったが、俺を心配しての事だとは分かっている。文句を言わず有難く同行してもらうことにした。

シューマッハ、キスリングは慎重な男達だが、大袈裟に騒ぐ男じゃない。俺の認識が甘いのかもしれん。まさか俺が迷子になると思っているわけでは有るまい。

資料室に着くとヴァレリーと男爵夫人が資料探しを手伝うと言って来たが断った。全くわかってないな、資料は読むだけじゃない、探す事から楽しむんだ。

二人には適当に気に入った資料を見ていてくれと言って俺は目指す資料を探し始めた。目当ての資料は百年以上前の資料だ、航路探査船の調査記録……。

資料を見つけたのは三十分ほど経ってからだった。第三十八〜第五十九航路探査船調査記録。俺が捜し求めていた資料だ。

銀河連邦が成立してしばらくの間、人類は生存圏を広げ続けた。探査船が活躍したのもこの時代だ。だが銀河連邦も成立後二百年を過ぎると中世的停滞が訪れる事になる。惑星探査は打ち切られ、辺境星域の開発も中止された……。

この停滞した時代を一新したのがルドルフだ。ルドルフは確かに訳の分からん劣悪遺伝子排除法なんてものを作り出し、銀河帝国の暗部を作り出してしまったが、彼は辺境星域を開発し、惑星探査を再開している。それにより帝国の版図は連邦時代よりも大きくなった。

彼が銀河帝国を創設し、初代皇帝になれたのも辺境星域の開発による経済効果、生存圏の拡大が大きいと俺は見ている。誰だって国が大きく、豊かになれば嬉しいものだ。

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