暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十話 謀議
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
す」
司令長官は丁寧に挨拶を返してくれた。

「その後、貴族達の動きは如何でしょう?」
「余り目立った動きは無いようですね。ですが早ければ今月中、遅くとも来月半ばまでには何らかの動きがあると思いますよ、ルックナー提督」

「それに伴って、フェザーンが動く……」
「ええ」
なるほど、特に我々の認識と違っている所は無い。やはり後一ヶ月がヤマ場だろう。

「我々に対して、何かご命令は有りますか?」
私の問いに司令長官は軽く頷いた。
「内乱が鎮圧された後、貴族達がフェザーンへの亡命を図ると思います」
「なるほど、それを捕らえろと」

司令長官は軽く笑いながら首を振った。
「いえ、そうではありません」
「?」
「彼らを適当にフェザーンに逃がしてください」
逃がす? 思いがけない言葉だ、私達は思わず顔を見合わせた。

「適当に? よろしいのですか、逃がしてしまっても?」
「構いません、リンテレン提督。彼らはいずれフェザーンで反帝国活動を始めます。それがフェザーン侵攻への大義名分になるでしょう」
「なるほど、分かりました。適当に逃がすとしましょう」

リンテレン提督の生真面目な口調に周囲から笑いが起こった。なるほど、次の戦いへの布石というわけか。確かに亡命した貴族達が何もせずにいるわけが無い。フェザーンに攻め込む大義名分になるだろう。

「それと、私に万一の事があった場合ですが……」
「閣下、縁起でもない事を仰らないでください」
大声で司令長官を遮ったのはルーディッゲ提督だった。目が吊り上っている。しかし司令長官は止めなかった。

「大事な事なのです、ルーディッゲ提督。良く聞いてください、私に万一の事が会った場合はメルカッツ提督が宇宙艦隊司令長官に親補されます。メルカッツ提督の指示に従ってください」

「!」
メルカッツ提督が宇宙艦隊司令長官になる。それでは……。
「ローエングラム伯はどうなりますか?」
「……私の死後の事ですから……、生き残っている人達が決めることになるでしょう……」

司令長官は私の問いにはっきりとは答えなかった。答えられなかったのではあるまい、答えたくなかったのだろう。司令長官に万一の事が有った場合、ローエングラム伯はそれを機に排除される、そういうことだろう。

帝国の上層部はローエングラム伯を帝国にとって不安定要因だと判断した。実際それに近いところは有る。今は司令長官がいるから良いが、司令長官の死後、宇宙艦隊司令長官になった伯をコントロールできる人間がいるだろうか?

おそらくいないだろう、帝国は新たな混乱に直面するに違いない。宇宙艦隊司令長官は言い方は悪いが帝国を守る番犬だ。番犬は強く、しかも御し易くなければならない。上層部はそう思っているだろう、その点でローエン
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ