第五章
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「アラビアンナイトに出て来るみたいな、な」
「それ本当なのかな」
「わしは嘘もホラも間違いも言わん」
やはりこのことも同じだった。
「正しい」
「だといいけれど」
「ではよいな」
「うん、とにかくだね」
「着替えるのだ」
そのミシュラー、そして他の服達にというのだ。
「そして式に出ろ」
「わかったよ」
こうした話をしてだった、そのうえで。
アサムは自分の部屋に入って着替えた、まずは。
ツブン、下に着る白い着物を着た。木綿であり祖父の言う通りとびきり上等の木綿を最高の技術で織っており着心地はバツグだった。
そこから頭に白い綿のスカーフを被った、クーフィーヤだ。こちらも仕立ては最高だった。
そのクーフィーヤを黒い輪の形の紐バンドであるイガールで止めた。ここまでしてから。
毛織もののコートであるミシュラーを着た、漆黒でネックラインに金糸と銀糸で縁取りの刺繍が上品に施されている。
そこまで着て自分の姿を姿見の鏡で見てだ、彼は部屋を出て。
父と祖父にだ、確かな声で言った。
「これならね」
「いいだろう」
「どんな娘さんでもだ」
「うん、惚れさせられるよ」
自分が王子になった気持ちで言ったのだった。
「本当に」
「そうだろう、ではな」
「これから式だ」
「御前が主役だ」
「主役として胸を張って出ろ」
そのミシュラーを着たからにはだ、こう言ってだ。
アサムを式に送り出した、そのうえで式がはじまったが。
一ヶ月後だ、ウサインは夜に彼の父の部屋に行って溜息をついて言った。
「まさかな」
「ああ、本当にな」
「向こうの娘さんが」
「あんなに美人でな」
サダムも言う。
「しかもスタイルもよくて」
「あれは何だ?」
こうまで言うアサムだった。
「女優さんか?」
「わしもそう思った」
アサムの妻となる女性を見てというのだ。
「こんな奇麗な娘さんがいるのかとな」
「わしはあんな奇麗な娘さん見たことがないぞ」
「わしもだ」
二人で言う。
「そしてな」
「アサムが見た途端な」
その恐ろしいまでの美貌の我fが妻をだ。
「心も何もかも奪われて」
「すっかり惚れ込んでな」
「今じゃ家に入った嫁さんの言いなりだ」
「一から千までな」
「かみさんは大事にしろと言ったが」
「尻に敷かれろとは言っていないが」
つまり夫の矜持は守れと言っていたのだ。
「それがな」
「ああしてな」
「心の奥底から惚れ込んで」
「もう朝も昼も夜もだ」
「かみさんと一緒で言いなりで」
「骨抜きになった」
こう弱った顔で言うのだった。
「まあ嫁さんを殴るよりはな」
「ずっといいがな」
だがそれでもというのだ。
「それでもな」
「ああなるとは」
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