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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十九話 帝国内務省
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シュタインと国務尚書の会話を聞きながらそう思った。国務尚書もエーレンベルク元帥もそれぞれの表情で考え込んでいる。あと二週間、長いのか、短いのか、微妙な所だ。

「間に合うかな、ヴァレンシュタイン」
今度はエーレンベルク元帥が問いかけた。
「分かりません。例の金融機関の第一回目の返済は今月末です。貴族達の我慢が何処まで続くか」

「これ以上、早くはならんか」
「それは無理だ、軍務尚書。彼らは今でも最低限の物資の準備しかしておらん。とりあえず、出立する。本格的な領地替えの準備はその後。そこまで割り切ってようやく今月末まで時間を縮めたのだ」

エーレンベルク元帥はこちらを見たが反論はしなかった。妙なものだ、帝国軍三長官会議と言えば昔は皮肉や嫌味の応酬が少なくなかった。だが今では意見の対立はあっても感情の対立は無い。

この場にいる最年少の元帥を見た。エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、この男が三長官の一角を占めるようになってから変わった。目障りな若造だった、危険だと思ったこともある。排除すべきかとも思った。

だがこの男には野心が無かった。その所為で排除できなかった、いや排除して良いのかどうかが判断できなかった。そして今ではそのことに感謝している。妙なものだ、もう一度そう思った。

「恐れていた事が起きました」
ヴァレンシュタインの言葉に皆が視線を彼に向けた。沈鬱そうな表情をしている。
「貴族達の中に領地替えに気付いた人間がいます。半信半疑なのでしょう、しきりに探りを入れているようです、フェルナー准将が誤魔化すのが大変だと言っていました」

その言葉に皆が顔を見合わせた。国務尚書、エーレンベルク元帥、ヴァレンシュタイン、皆渋い表情をしている。
「やはり情報が漏れたようじゃの」
「ローエングラム伯、ですな……」

国務尚書とエーレンベルク元帥が話している。確かに、漏らすとすればあの男とその周辺しか居ない。あの男は宇宙艦隊司令長官になりたいのだ。そして力を背景にこの帝国の覇権を握ろうとしている。

ヴァレンシュタインを謀殺し、その混乱の中で軍の実権を握るか、あるいは昇進という形で宇宙艦隊司令長官になるか。そのどちらにしろ大規模な騒乱が必要だ。領地替え等は最も望まない事だろう。

ラインハルト・フォン・ローエングラム、野心と覇気に溢れた男だ。そしてそれを隠そうともしない。隠すことなど考えたことも無いのだろう、それに相応しい能力と容姿も持っている。

眩しい輝きを持つ男だ。だがその事が彼の周囲から人を遠ざけるのかもしれない、皆遠くから見ているだけだ。孤独だろう、彼にとって友人といえる人間があの赤毛の若者以外にいるだろうか? いや大体あれは友人と言えるのか……。

「残り二週間か、難しいかもしれんの」
ぽつんと吐い
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