40部分:第四十首
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第四十首
第四十首 平兼盛
誰にも言われるようなことになってしまったようだ。
もう皆気付いてしまっているようだ。
心の中に隠していたのは理由があったから。
隠していなくてはならなかったから。だからなのに。
悩みある恋。密かでなければならない恋。
だからずっと自分の中にだけ秘めていて。それは口にも誰にも決して出さず語らなかったのに。それでも。
どうして皆にわかってしまったのか。想いが。
そのことを考えている時に鏡に出会い。そこでわかった。
鏡に映る自分の顔に書いてあった。想っていることが。
恋にやつれて見違えるようになってしまった顔。その自分の顔に気付いたから。
だから皆にわかってしまった。己のこの想い。想い募ってどうしようもなくなっていることが今顔に出てしまっているから。このやつれてしまった顔にこそ。そのことがこれ以上になくはっきりと出てしまっているのだった。
秘めて誰にも言わなかったこの想い。その知られてしまった想いは。そのままでは済まず。何時しか声になって歌になって口から出てしまったのだった。
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
歌にもなって出て来たこの想い。想いは尽きず果てず自分の心をさらに想い募らせていく。
この気持ちはもう表にも出てしまった。この想いを胸に今も。あの人のことを想わずにはいられない。
第四十首 完
2009・1・7
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