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シュロム
シュロム
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は和羽だ。神崎歩嶺は一目で見とる。危ない。助けなければ。
「はいこれあげます」
横を通りすがったカップルにジュースを渡す。カップルは少々躊躇しながらそれを受け取った。
「ラッキーだね」
「ねー」
カップルはそう言って歩き出す。
手ぶらになった歩嶺はズカズカと路地裏に近づいていき、ついに男達の真後ろにまでたどり着いた。
「僕の彼女になんか用?」
歩嶺は男達にぶっきらぼうに言い放った。しっかりした目で睨んで威嚇する。
「歩嶺!」
和羽が震えながら胸に飛び込んできた。抱きしめて後ろにかくまおうとした途端、フードを掴まれたのだろう、和羽が小さく悲鳴をあげながら歩嶺から引き離された。和羽はそのまま集団を通り抜け尻餅を着く。泣きそうな顔が見て取れた。
和羽には目もくれず、目標は歩嶺に切り替わる。歩嶺にとっては幸いだった。
「お前がフレイか」
「遊んでやるよ」
男達の声はさっきのそれとは違い、残酷さを醸し出している。
歩嶺は一番いかつい男に胸ぐらをつかまれた。歩嶺は一切動じない。抵抗すらしない。ただされるがままに身構えるだけだった。
「生意気なんだよ!」
ボクッと痛々しい音がして歩嶺は殴られた。やはりやり慣れているのだろう。あまりの痛さに歩嶺は倒れこんだ。
「あ?何だよそんなもんかよ!」
歩嶺を殴った男は容赦無く、続けざまに倒れこんでいる歩嶺の脇腹を蹴り込んだ。
「うぐっ…!」
声にならない声を上げ、歩嶺は必死に痛みをこらえる。
「やれ」
男が言った。すると他の男達が歩嶺を取り囲み、思うがままに蹴り始める。頭だろうと腹だろうと足だろうと関係ない。力尽くに蹴られ、蹴られ、蹴られ、蹴られ続ける。肋骨が折れる感覚があった。痛覚が頭を麻痺させていく。視界が歪み、和羽の姿がだんだんと見えなくなっていく。
痛いだけ、そう、痛いだけだ。
顔面に蹴りを一発くらい、とうとう歩嶺は気を失った。

デートに群がるカップル達が、よくこの街に来て楽しんでいる。
子供連れの家族達も、この街が好きらしい。
そう。この街は平和なんだ。
どうしてくれるんだろうな、彼らは。
男は深く腰掛けた黒革の椅子に足を組んで座り、グダッと頭を垂らしてモニターを眺めていた。

どのくらいの時間痛ぶられ続けただろうか。歩嶺はゆっくりと目を開いた。大きく息を吸い、吐く。異常は無い。
人気の無い路地裏の入り口。通りかかる人々は皆見て見ぬ振り。それが社会一般においての正解だからだ。それでいい。
視界がはっきりしてくると、泣きべそをかく和羽が見えた。
無事だったか…。よかった…。
心の中でそう呟く。
「和羽」
「あ!歩嶺!」
和羽も歩嶺が目覚めた事に気がつき、彼氏の名前を叫んだ。
「大丈夫。痛くないよ」
「嘘…!…ゴメン」
「大丈夫」
歩嶺はゆ
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