暁 〜小説投稿サイト〜
シュロム
シュロム
[2/21]

[1] [9] 最後 最初
っかくの日曜日。何もしないにしては勿体無い。街に出てぶらり散策でもしようか。きっと街路樹の紅葉が綺麗だろう。
紺色の柔らかい素材のズボンにグレーの長袖ティーシャツを着、青いベストを選んだ。鏡の前で身だしなみをチェックし、財布と携帯のみ持って靴を履いて玄関を出た。外は秋晴れの心地良い風の吹く、お出かけ日和だった。

ミャーミャーと三毛の子猫が鳴くのを、桜木和羽はしゃがんで愛おしそうに見つめていた。和羽の手にはこの路地裏の近くで摘んだ猫じゃらしが握られている。子猫は幼いながらにして本能的にしっかりとその穂先に焦点を合わせ、狙いを定めて飛び跳ねる。そんな子猫の姿に、和羽は顔が思わず綻びてしまう。
「可愛いでしゅねー」
語尾にハートマークが付くような台詞を無意識に呟き、メロメロな和羽は幸せに浸っていた。
刹那子猫の視線が和羽の後ろに向いた。そして一瞬のうちに猫じゃらしを無視の対象にすると、ミャーと一声あげて一目散にその場から駆けて逃げてしまった。
「あーあ、行っちゃった」
和羽は小声でつまらなそうにそう言って、遊んでいた猫じゃらしをその場に捨てる。
「ほんっと、かわい子ちゃんがこんなところで何してんのかな?」
子猫に夢中で気がつかなかった。和羽が声にはっとして後ろを振り向くと、六人の見るからに怪しい男達が和羽をぐるりと囲み、ニヤニヤと笑っている。和羽は反射的に立ち上がって壁に背を着ける。
「ねぇ遊ぼうよー」
男の一人が言った。比較的背の低い、しかし特にチャラい格好をした男だ。比較的背が低いと言っても、和羽よりはずっと高い。よって威圧感がものすごくある。
和羽は心の中で必死に願った。歩嶺、帰ってきて…。お願い…!
フレイ、カエッテキテ…。
「お姉ちゃん今一人だよね?」
「俺らと一緒に遊ぼうよ?」
「とりあえずカラオケ行かない?」
男共の次々に投げかけられる笑いの混じった声。抵抗すればきっと殴られるのだろう。男達がしているあの角張った指輪を見ればすぐにわかる。恐らく指輪に見立てたメリケンサックだ。しかし抵抗しなくても、どうなるかは目に見えている。
ここは、賭けしかない。
和羽はいきなり大声で叫んだ。
「歩嶺が帰ってきたらただじゃ済まないんだから!ボッコボコなんだから!」
唐突な出来事に男達は皆キョトンとする。
まもなく。
「僕の彼女になんか用?」

ジーンズに白いシャツを合わせた爽やかな印象の青年が、美味しそうなジュースを二人分持って歩いてきた。彼女が待つはずの花壇まで来て、あれ?と思い辺りを見渡す。
「いない…。ん?」
近くのビルとビルの狭間、路地裏の方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。目を凝らすと、いた。オレンジのパーカーにジーンズのショートパンツのポニーテール。間違いない。路地裏で男達に絡まれているの
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ