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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#17
DARK BLUE MOON\ 〜End Of Sorrow〜
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』 は、
既に地方領主の “買い手” が決まっているこの娘に
人並みの行儀作法を(しつけ) ろという単純なもの。
 だが、その真意は相手の 『どんな要求にも』 逆らわず黙って応じるという
「服従心」 を叩き込めという讒言(ざんげん)以外の何ものでもなかった。
 通常このような 『仕事』 は、役得がてら男である奴等が行うモノなのであるが、
今回のように「キズもの」に出来ない、 “通常とは違う部分に”
「商品価値」が在る者は、同じ娼館の女にその勤めが回された。
 この当時、末期の梅毒や天然痘、癩病 (ハンセン病)等の忌病に犯された者が、
若い娘 (特に生娘)と交わるとその病魔が完治(なお)るという噂がまことしやかに囁かれたが、
ソレがこの少女と関係するのかどうかは定かではない。
 せいぜい “イイ子” に教育してやってくれよ、
という奴等の下卑た笑みを含ませた声を背後に聞きながら
『その時』 の自分は、明日屠殺(とさつ)される子羊でも視るような眼で
彼女を見ていたのだと想う。
 少女の不幸な運命にその先の残酷な未来に、
心を動かすにはもう自分は、
身を引き裂く程の凄まじい憎しみで荒み切っていた。
 信心深い家系だったのか、鈍い光沢を放つロザリオを
脹らみの淡い胸元に下げていたのも気に障った。
 神など、存在しないのに。
 そして事実、 『そのように』 彼女を扱った。
 酷い言葉で侮蔑し、失敗を見つけては詰り、
夜に啜り泣く声を聞いては感情的に罵倒した。
 自分より劣る者が出来たようで嬉しかった。
 何を言っても、何をしても、自分に縋るしかない存在が生まれたコトが。
 弱い者は何をされても仕方がない。
 今まで自分がされてきたコトを 『する側』 に廻った恍惚感に陶然となった。
 その行為を、心情を自省するには、もう自分の中の善悪という概念は
修復不能な迄に壊れきっていた。
 長い間忘れていた笑みさえもを歪んだ様相(カタチ)で取り戻し、
彼女を貶める事が何よりの楽しみとなった。
 堕ちに堕ちたドン底の、その更に(くら)き深みに
際限なく沈んでいくような気がしたが、もうどうでも良かった。
『本当にどうでも良かった』




“どうせ死ねば、スベテが終わりなのだから”




 終わりのないのが 『オワリ』 なら、
その救いのない無限地獄の中で少しくらい自分が楽しんだ所で、
誰に難じられる覚えもないと想った。
 しかし、やはり罪は罪だったのか?
 罪無き者を傷つけたその報いは、いとも容易く己に下された。
 彼女と出逢って二週間が過ぎた頃、
これ迄の苛酷な辛苦の果てに悪質な伝染病に罹患(りかん)し、
他の感染症も併発した自分は、逃れられない死の淵へと追
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