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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十八話 包囲
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隊司令長官就任を認めた」
「卿を副司令長官にすることだな」
「表向きはローエングラム伯を補佐し、国内の内乱に備えるという事だった。だが実際には伯へのお目付け役さ」

どこか自嘲するかのようなエーリッヒの口調だった。
「彼らにそう頼まれたのか?」
「いや、自然とそうなるだろうと考えたのさ」
「……」

「元々私はローエングラム伯に色々な形で協力をしていた。しかし第三次ティアマト会戦で私はローエングラム伯に指揮権を渡さなかった。そのことで彼らは私が無条件に伯を支持しているわけではないと考えた」
「……」

「それと自分では気付かなかったが私とローエングラム伯には明確な違いが有ったようだ。その事にも彼らは気付いた」
「違いとは?」

「ローエングラム伯は陛下に対して明確な敵意が有った。しかし私にはそれが無かった、むしろ好意に近いものが有った。つまりその一点で、伯が簒奪に動いたときは私が抑えに回ると彼らは読んだんだ」
「……」

もう一度頭を振った。納得出来なかったのではない、身体に纏わり付く重苦しいものを払うためだ。エーレンベルク元帥、リヒテンラーデ侯、あの二人の凄味を今更ながらひしひしと感じる。

あの老人達の予測どおり、エーリッヒはローエングラム伯との間に距離を置き始めた。そしてその分だけ陛下に近づいている。伯が簒奪を目論む以上そうなる、敵の敵は味方ということだ。

「シューマッハ准将は表向きは皇帝陛下に万一の事が有った場合、私とエーレンベルク元帥の間を円滑に保ち、オーディンの治安を守るためにつけられた人間だった。だが……」

「実際には卿がローエングラム伯への抑えとして機能しているかどうかを確認するために送られたお目付け役、そういうことか……」
「そういうことだ。もっとも気付いたのは先日の帝国軍三長官会議でだが」

俺の言葉にエーリッヒは頷いた。応接室の中には重苦しい空気が流れている。話題を変えるべきだろうか、しかし未だ聞いていないことがある。有耶無耶には出来ない……。

「エーリッヒ、シューマッハ准将の事は分かった。だがエーレンベルク元帥の危機とはどういうことだ?」
エーリッヒは俺の問いに微かに笑みを浮かべた。

「ローエングラム伯が宇宙艦隊司令長官になり、私が統帥本部総長になる。その場合シュタインホフ元帥はどうなる?」
「なるほど、軍務尚書か……」
「そうだ、エーレンベルク元帥は勇退という形で軍を退役することになるだろう」

誰も失態を犯してはいない。である以上皆が一つポストを上げることになる。エーレンベルク元帥は最年長でもある、後進に道を譲るという形で軍から去ることになるか……。

「エーレンベルク元帥は怒っただろうな」
「先日の帝国軍三長官会議である人事が決定された……。内
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