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百人一首
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第二十八首

               第二十八首  源宇干朝臣
 冬になって何もかもが静まり返ってしまって。
 この山里も今はもうひっそりとしてしまっている。
 夏の蝉の鳴き声も今はなくて。夜毎の寒さは厳しく鳥も虫もいなくなってしまって。
 木を見ればその歯は枯れ葉さえもなくなってしまって草は灰色になって朝には霜で白くなってしまう。時には雪が積もり水は氷となってしまう。全てが冬の中に覆われそこで凍てついて枯れて寂しさを募らせていく。
 秋までは多くの人がここに来てくれていたのに今はもう誰も来ない。山里は静かなのを通り越して沈黙しきっている。その沈黙を打ち破ろうにも今はどうこうすることもできない。ただただその寒さを眺めるだけだった。
 そこにいる自分も今は栄華とは無縁で。誰からも忘れ去られてしまったかのようだ。
 そんな寒々とした中でも筆はあり幸いにしてそこに書くものもあった。それで徒然なるままに今歌を書き留めた。

山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば

 詠ってみると寂しさがより募ってくる。冬の木の枝は細く今にも折れてしまいそうだ。そうした寒々とした世界を見て春は来るのだろうかとさえ不安になってくる。今この静まり返り何もない世界を見ていて。今は冬の世界が全てを覆っている。何もなくなり静かな沈黙だけになっているこの世界は。冬によってそうなりただそこに寂しさを見せているだけなのだった。


第二十八首   完


                   2008・12・26

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