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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十七話 呪縛
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ード・キルヒアイス准将が来た」
「聞いている。卿がそれを望んだと聞いたが」
「誘ったのは事実だが強制じゃない。彼が自らの意志で来たのなら、積極的に経験を積もうとするはずだ。だが彼はそんな行動は取らない。一生懸命聞き耳を立てているよ」

「スパイか?」
「いじらしいよ。ジークフリード・キルヒアイス准将は帝国軍人じゃない、ローエングラム伯の臣下だ。あれを見ているとよく分かる。グリューネワルト伯爵夫人も罪な方だ」
そう言うとエーリッヒは目を伏せた。
「それにオーベルシュタインが絡んでいると?」

「キルヒアイス准将はスパイ活動などには向かない。自分でもそんな事は分かっているだろう。ローエングラム伯もそれは分かっている。第一伯がキルヒアイス准将にそんなことをさせるわけが無い。誰がそう仕向けたか、そういうことを考えそうなのは誰か……」
エーリッヒが“分かるだろう” という様にこちらを見てきた。俺も頷く事で答える。

「……いいのか、そのままにしておいて」
「……出来る事ならこちらで経験を積んで欲しかったと思う。そうなれば視野も広がり彼も周囲から認められたはずだ。少しは考えが変わったかもしれない」

「……」
「だが、少なくともローエングラム伯とキルヒアイス准将を離れさせる事が出来た。今あの二人が一緒に居る事は危険だ。悪い方向に進みかねない。この先ローエングラム伯が何か行動を起そうとしてもキルヒアイス准将の存在が自重させるだろう」

「人質か」
俺の言葉にエーリッヒは小さく頷いた。
「そういう形で利用するしかないね。それにキルヒアイス准将がいない分だけフロイライン・マリーンドルフの存在がローエングラム伯の中で大きくなるはずだ。その分だけオーベルシュタインは動きにくくなる。元は取れると私は思う」
「なるほど。しかし気をつけてくれよ、窮鼠猫を噛むの譬えも有るからな」

キルヒアイス准将が暴発すれば一番最初に疑われるのはローエングラム伯だ。そう思えばキルヒアイス准将は何も出来ないはずだが、追い詰められればどうなるかわからない。そして追い詰めるのはエーリッヒとは限らない……。

「分かっているよ、ギュンター。十分に気をつける。……もっともこうも敵が多いと気を付けるのも容易じゃないね」
そう言うとエーリッヒは肩をすくめておどけて見せた。

「冗談じゃないんだぞ」
「もちろんだ。それよりここ最近、宇宙艦隊司令部で妙な噂が流れた事は知っているかな」

「?」
噂? 一体何の噂だ? エーリッヒは俺を可笑しそうに見ている。
「宇宙艦隊司令長官は戦術シミュレーションに自信が無い。戦術家としては大した事が無い。そんな噂だ」
「……」

なんだ、それは? エーリッヒが戦術家としては大した事が無い? 何処の馬鹿がそんな噂を流
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