24部分:第二十四首
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第二十四首
第二十四首 管家
心の中に密かに思うことがありそれへの願掛けと秋の紅葉の美しさにもついつい誘われて手向山の神社に立ち寄った秋のある日のこと。
紅葉は主ではなくあくまで思うことへの願掛けであったのにそれでも社も庭も池も全てを覆って染め上げているその紅葉があまりにも紅く鮮やかなのに目も心も奪われてしまった。
くれないのその美しい葉が何にも替え難いと想ったので。
神に捧げる幣のかわりにその一枝を捧げることにした。
その一枝を捧げつつ願うのはあえてここに来て無事を願掛けしようと決めていたあの人の旅のこと。互いによく知っているので願わずにはいられない。あの人の旅が無事であることを。
今思いも寄らなかった程にまで美しいその紅葉の葉を神に捧げつつ。その旅の無事を祈る。無事を祈り終えて一人静かにたたずんでいると。その気持ちが歌になって自然と口から出て来たのだった。
この度は 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神の万に万に
自然と流れるように出て来た歌だけれど。詠ってみるとこれが周りに喜ばれ。自分でも詠ったことと周りの笑顔がとても嬉しく感じるのだった。
何はともあれ今はあの人の旅の無事を祈ろう。静かにこう思いつつ神の社を後にしそのまま立ち去る。秋の紅葉が何もかもを紅に染め上げているのを見ながら。そう心の中で一人思いつつ今は社を後にするのだった。願掛けを終えて紅葉も見た満ち足りた気持ちで。
第二十四首 完
2008・12・22
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