第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
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緊迫した面持ちのまま不承不承グラスを手に取る。
そして己の端麗な口唇に運ぶ刹那、飲み口にルージュの痕が眼に入ったので
そこは作法のようにそれとなく避け慎重に中身を呷る。
「……!」
枯れた、渋みのある複雑な味に微かな甘さ。
口当たりが想ったよりも滑らかだったので別段飲めなくはない。
だがしかし、酒に於いて真に怖ろしいのは 『その後 (良い見本が目の前にいる)』
なので花京院は軽く口に含んだ程度でグラスを置こうとするが、
ジッと己を凝視する深い菫色の双眸がそれを許さない。
「……ッッ!!」
コレなら 『能力』 の解らないスタンド攻撃を受けた方が余程マシだという心情のまま、
中性的な風貌の美男子はその瞳を閉じてグラスの液体を一気に嚥下する。
「良〜いィ、呑みっぷりだったわぁ〜。
やっぱりぃ〜、男はぁ〜、こうじゃないとねぇ〜」
衒いのない笑顔のまま、美女は子供のように手をパチパチとやっている。
「……」
無言のまま深く息をつき、口直しにアイスティーの類でも注文しようとした
花京院のイヤリングで飾られた耳元に、
「それじゃあ〜、 “二杯目” を作るわねぇ〜。
どっちがどれだけ呑めるかぁ〜、勝負よぉ〜、ノリアキィ〜」
「ッッ!!」
信じがたい事実が飛び込んできた。
【4】
ソレから約3時間後、 花京院 典明は故郷を発ってから
最大最強の危難に遭遇していた。
途中承太郎に連絡を入れ、自分はかなり遅くなるという旨を伝えた後
今は見事なまでに酔い潰れてしまったマージョリーを肩に背負い、
だらりとなった右腕を胸元で抱え半ば引きずるようにしながらフロアを歩く。
自分も相当量の酒を呑まされた筈だが、何とか美女を(熟練のホスト顔負けの話術で)
巧みに宥め賺したコトにより、何とか前後不覚になるのだけは避けられた。
最も、美女と二人で完全にボトル一本空けてしまった為、
正直足下は妙にフラつき視界も滲むようにボヤけている。
普通は直進するのもままならぬ深酔いの状態ではあるが、
ソコは何とか歴戦の 『スタンド使い』 のみに宿る強靭な精神力で
崩れ落ちそうになる躰をなんとか支える。
正直かなりしんどいが、しかし絶対に倒れるワケにはいかなかった。
高級ホテルの煌びやかなフロアとはいえ、
その一角で絶世の美女が一人酔い潰れていたら、
世に蔓延る邪な男の誰かに間違いなく “お持ち帰り” にされてしまうだろう。
幾ら凄絶極まる能力を持つフレイムヘイズだとしても、
この状態で抵抗出来るかどうかは甚だ疑問だ。
ソノ自分でもよく解らぬ使命感の許、
肩にかけた “グリモア” の重さに辟易しながらも
翡翠の美男子
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