第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
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、自嘲気味な笑みを浮かべてグラスから口を放す翡翠の美男子。
しかし。
その彼の穏やかな心情はこの数十分後、急転直下で変動するコトになる。
……
…………
………………
「ッハ、ハハハ、アハハハハハハハハハハハ!!!!」
まるで年端もいかない少女であるかのように、
マージョリーは今日初めて、あけっぴろげな笑い声をあげた。
その原因は言わずもがな、来店して一時間も経っていないのに
速くも半分近くに減ったボトルの中身である。
「ふぁ〜、久ぁ〜しぶりにぃ〜良い酒ェ〜、
いいわぁ〜、ここぉ〜、気に入っちゃったかもぉ〜♪」
蕩けるよう、否、既に溶けた後のようなフニャフニャした笑い声で、
美女は合わさる氷の音と共にグラスを傾けている。
最早通常の、高原で気高く咲き誇る一輪の花ような雰囲気は残らず消し飛び、
ただ酒気に戯れる無邪気な女がいるのみだった。
「本当に、お酒がお好きなんですね」
露の浮かんだカクテルグラスを前に、花京院は穏やかな笑みと共に言う。
無論彼女の唐突な豹変ぶり(笑い上戸というヤツだろうか?)
に驚かなかったと言えば嘘になるが、心底楽しそうに酒を嗜むマージョリーを見ていると
余計なコトを指摘するのは無粋に想えた。
「そうぉ〜ようぉ〜、酒とぉ〜、戦いがぁ〜、無かったらぁ〜。
この世なんてぇ〜、生きるにぃ〜、値しないわぁ〜」
トロンとした表情で歌うように哲学じみたコトを口走った美女は、
そのまま残りが三分の一ほどになった花京院のカクテルに手を伸ばす。
「あ、あの、ソレは……!」
飲み物の確保とは全く別の意味でマージョリーの挙動を制しようとした
美男子を無視し、彼女はそのまま中の液体を一息で飲み干す。
「なぁ〜にぃ〜、これぇ〜、ただのぉ〜、
フルーツ搾ったシラップじゃないのぉ〜」
半分閉じかけた瞳のまま、美女は(もぉ〜等と言いながら)
そのマニキュアで彩られた細い指先でグラスに氷を入れ、
次いで琥珀色の液体と同じ原産地の水で割り、
ガラス製のマドラーで軽くかき混ぜて元に戻す。
「はぁ〜い、ノリアキの分〜」
まるで児戯のように、無垢な満面の笑顔でソレを勧めるマージョリー。
しかし当然中身は空想の産物ではなく現実の酒なので花京院は想わず息を呑む。
「あ、あの、お気持ちだけ、受け取っておきます。
ボクはまだ、未成年なので、ミス・マージョリー」
と、真っ当な正論で美女の勧めを辞退しようとしたがすぐに、
「なぁ〜にぃ〜? 私のぉ〜、酒がぁ〜、飲めないってぇのぉ〜? ノリアキィ〜」
と、酒席では一番言ってはいけない台詞を座った眼で訴える。
「……」
やがて両者無言の膠着状態に陥り、自分から瞳を逸らさない美女に根負けしたのか、
花京院は
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